第3話「呪いのリセマラキス」
その日の放課後
まんまと桜谷の家について行った君野は、その後ベッドに閉じ込められ
恐怖で顔を歪ませた。
それから何時間経過したのだろう
カーテンの閉まった今薄暗い部屋の中。
ベッドの上で、君野は縛られていたロープから解放された。
なぜか僕は帰らないで、桜谷さんとベッドにうつ伏せになり、頬をシーツにつけたまま手をつないで、お互いの顔を見つめている。
「私から逃げてもいいのよ。」
と、僕に酷いことをしてきた彼女が笑いながら言う。
カーテンの隙間から、夏の午後5時の夏の明るい光が漏れている。
その明るさとは裏腹に、この部屋の暗さは切り取られたように
冷たく取り残されたよう…
とても怖かった。逃げたかった。
でも、帰りたくない…
目の前の彼女の黒目は大きく、こっちをじっと見て笑っている。
まるで彼女は、そんな僕の心を見透かしたようだ。
僕の手が離れないことをいいことに、三編みをほどいた長い髪の毛を垂らし、メガネのないその瞳で僕を蛇のように捉える。
その姿は妖艶で、
本当に今日一日一緒に過ごした子なのかと思うほど
とてもきれいな女の子だ。
「だって、君野くんがここにいる理由なんてないもの。」
「…僕はどうしたらいいの?」
「どうしてほしい?明日その願いを聞いてあげるわ。…あなたが覚えていたらね。」
僕はその言葉に言いしれぬ感覚を感じた。
なんだかそれが守れない気がするのだ。
彼女の手がそっと僕の頬に触れ、涙の跡を優しく拭う。もう僕はこの人から逃げられないことを感じ取った。
「ねえ、覚えてる?幼少期にこのベッドの下で君野くんは私にキスをした。あの時、あなたの顔がどれだけ真剣だったか、今でも覚えているの。」
僕は目を見開いた。記憶がないはずなのに、胸の奥に不確かな感覚が広がった。
「私、過去に戻れるならなんでもするわ。未来なんか、見えなくたっていいもの…。」
「僕は僕だよ…過去の僕は違う…。」
彼女は再び君野に視線を戻すと、一瞬無表情になった
しかし次にはニヤッと笑ってみせる。
「あなたがどこに行こうと私からは磁石のように離れられないわ。たとえどんなに嫌がってもね…。」
僕の手を握る手が一瞬強くなった。
その握られた手は、氷漬けにされて二度と離すことができない。
逃れようとするなら、僕は彼女に氷漬けにでもされるのだろうか。
根拠はないが
その言葉が真実のような気もした
けれど
今の僕には何も抗える力がないと何故か、そう思い込んでいた。
その夜
僕は夜中に目を覚ました。
ここはどこ?
「あぐっ…!!」
すると後頭部に鈍痛と、肉が切れる痛みが走った。
「え…?」
僕の手は血まみれだった。
なにこれ…?
わなわなと手が震える。え?どういう状況?
ここはどこ?どこかの家のリビング…
「君野くん!!!!!」
上の方から女性の金切り声がした。
叫び声がした方は真上だ。
あの人は…誰…?
真上を見上げる、その姿を認識できるが誰だかわからない。
意識が薄れる中、僕の夢はまるで映画の断片のように切り替わり続けた。
そして目を覚ました時いつもの朝が訪れていた。
僕の部屋の天井だ。
いつも通り白い無機質だがじわじわとそれが安心として胸の中で広がっていく。
だが、胸の奥で鐘が打ち鳴らされるように心臓がドクドクと鼓動を刻んでいる。
「はあ…はあ…。」
目には頭の痛さで泣いていた跡が残っている。
でも、どこも怪我もなく、もちろん無傷だ。
「はあ…よかった。」
体をゆっくり起こす。
顔を洗ってこよう。きっと寝付きが悪かっただけ。
しかし不思議なもので
僕がベッドに出た時にはあんなに怖かった走馬灯のような記憶や映像は一瞬で引っ込み、何を見ていたのかも消えていた。
冷静になると外の玄関から母親と見知らぬ女の子の声が聞こえた。
「おはようございます。お母さん。」
と、桜谷は家の庭の植木の手入れをしていた小柄な女性に話しかけた。
君野くんのお母さんだ。麦わら帽子に、アームカバーをつけて家庭菜園をいじっている。
「あら!瑠璃子ちゃんおはよう!まだ吉郎は寝てるわ。うちでコーヒーでも飲んで行って!」
「はい。いただきます。」
そのまま家に通されると
私は君野家のキッチンの目の前にある食卓に座りそのお母さんと話し込んだ。
君野家は、3人家族だ。
父と息子だけでは話せない話もあるようで
君野くんと顔の似ているこのお母さんは私が来ると娘のように扱ってくれる。
そのきっかけはかなり最悪な事故だったけど
今では私の家庭の事情を理解して
本物のお母さんと呼んで良いと言ってくれたのは嬉しかった。
でも、まさかそんな子が息子にとんでもないことをしているなんて思いもよらないだろう。
「瑠璃子ちゃん、本当に吉郎と仲良くしてくれてありがとね。」
「いいえ。私も彼とは好きでいるので。」
「ううん。ウチの息子、事故に遭って今までの記憶も無くなっちゃって、せっかく入った学校で目的のサッカーもできなくなって…。唯一瑠璃子ちゃんが支えてくれて本当に助かってるのよ。」
「でも、事故の原因は私ですから。」
「責任感じてるの?でも、マジックをしようとして、吉郎がパニックになっちゃったんでしょ。事故だし仕方ないわ。でも、まさかパニックで2階から落ちちゃうなんてね。」
お母さんが遠い目をして話す。
私はそんな時、どんな気持ちでいいかわからなくなる。
「事故の後、どれだけ変わってしまったか…本当に信じられなかったの。でもね、今の吉郎を見ていると、もう一度やり直せるかもしれないって思えるのよ。」
と答えた。
それは4月の終わりの出来事。
私のあの部屋から逃げ出した君野くんは、そのまま開けた2階から、欄干を登り落ちてしまった。
真下のガラステーブルに背中から落ちて
頭や体をガラスで切ってしまったのだ。
彼がサッカー部として、早くも頭角を表していた頃だった。
私の監督不足だったと
本当に申し訳ないことをしたと思っている。
ガタガタ
この家の2階から物音がする。
「起きたわね。また寝ぼけて変なこと言うのかしら。」
お母さんはくすくすと笑う。
私に気を遣っているのか、明るい話題をすぐに提供するいいお母さんだ。
私も、こんなお母さんがよかったな…。
トントントンと静かに降りてくる足音。
すると、パジャマ姿の頭に落雷を受けたみたいな寝癖をつけた君野が顔を出した。
「あ、おはよう。…誰?」
と、君野は2回瞬きをし、桜谷を前にリビングの扉の前で固まっている。
「やだもう!まーた寝ぼけてるの?良いから顔洗って歯磨きしてきなさい。」
「うん。」
君野はそうあくびをしながら、洗面台に向かう。
「ごめんね瑠璃子ちゃん。朝毎日言われるの傷つくわよね。」
「良いんです。寝ぼけてるの時の一時的なものですから。」
違う。実際は昨日呪いのキスをしたから。
相変わらず、君野くんには特に何も変化はなさそうだ。
いつもの反応が返ってくるだけで
何も進展がない。
いつになったら卵の殻が割れるように本当の彼が出てきてくれるのだろう…
「もう。せっかく好きでいてくれる女の子が来てるって言うのに。」
君野くんの母はそう口を尖らせる。
お母さんが私を息子が好きな女の子とするのは
私がそう言ったから。
これも
呪いのキスでの記憶の整合性のため。
今大事な時期なので…
と、言うことで彼自身にもあまり追及しないように図っている。
そう言った努力もあって
君野くんはあっという間に知らない女の子を信用してしまう。
君野くんママが洗濯をしにむかうと、私は胸ポケットに入れていたそのサイズのメモ帳を取り出す。
そこには自分で書いたメモ帳の文字が事細かく、その線に合わせて書かれていた。
そのページの3分の2は埋まっている。
●サッカーの話はNG。
●火曜と木曜のパンの日は大体はちみつとのりたま。
●子ども舌。わかりやすい味が好き。
などと、この2ヶ月、彼と接して得たデータが揃っていた。
呪いのキスは恋愛ゲームのように
何度でもリセットすればやり直すことができる。
彼を自分の理想通りに育てることができるはず…と
模索している。
しかし大体過去の話をしすぎて失敗してしまう。
早く幼少期頃の王子様に戻らないかとつい、気持ちがはやってしまうのだ。
「落ち着いて。少しずつよ…。」
今日の朝のメニューは鮭と玉子焼きとウインナー。
君野くんのお母さんは、卵焼きは甘いものとしょっぱいものランダムで作る。
その際に醤油をいれると卵焼きの色は若干濃いが今日は甘い卵焼きだ。
さらに甘くない時は、ウインナーには醤油をつけないが今日は甘いので、
ウインナーに醤油をつける。
「すごいね桜谷さん。本当に僕のこと、なんでも知っているんだね。」
制服になり、髪を整えシャキッとした彼は
醤油がすでに用意されているのをみて感心してくれる。
彼はその前に私が彼女だと聞いて大層驚いていたけれど、
こんなにも初対面のわたしを受け入れてくれるのは、過去の彼がそうさせているのかもしれない。
本当にゲームのコントローラーを握っているようだ。
次は絶対にうまくやる…。
と、彼女の恋愛ゲームはまた今日から1からスタートした。
呪いのキスをした翌日のその行動パターンは
そのメモ帳通りに行われる。
彼の家に行き、登校したら公園へ。
その時の反応をじっくり見て、思い出す兆しがあるか、入念にチェックをする。
今まではあらゆることをやってきた。
過去の仕草、過去の物を渡す作戦
昔好きだったものの話をしてみたり…
いずれも失敗に終わっている。
彼に過去帰りの兆候はなく、八方塞がりだ。
私の好感度をもっと上げる方が先なのかもしれない…。
そこから私との過去話をすれば、
彼はきっと昔の彼にもどっていくはず。
そう
遠回りこそ近道作戦を決行することにした。
しかし
その中で新たな問題が発生した。
それは君野くんの好感度だけをひたすらあげ続けた三日目の出来事だった…。
ピューピュー
休み時間、隣の席から口笛の音がする。
「ねえ、桜谷さんって、口笛吹ける?」
「ううん。できないけど。」
「やってみて。」
「少し音が出る程度よ。」
私は口を尖らせて音を出そうとする。
しかし、息を吐くとそこから微かに音が出るだけで、君野くんのように音程は取れない。
「口笛の音程を取るのって、意外とシンプルなんだよ。軽く唇を閉じて、息を少しだけ強めに吹いてみて。息を強く吹き過ぎないことがポイントだよ。ちょっと試してみて。」
そうにっこり笑う。
私はただ好感度を上げたくて必要以上に頑張ったがその様子に彼がくすくすと笑っている。
「そんなにできないことが面白い?」
その態度に思わずムッとしてしまう。
「ううん。そうじゃないよ。ただキス顔がすっごくかわいいなって。」
私はその言葉に一瞬何を言われたのか理解できず、固まった。
声にならない言葉が喉元でかすれる。
いたずらっぽく笑う彼の心が読めず、ただ目をパチパチとさせる。
嬉しさと戸惑いとくすぐったさが胸に広がった。
さらに
君野くんは人差し指の腹を私の唇に当ててきた。
その指の温度が唇伝いにじわっとあたたかくなるとまた、体が熱くなる。
「もう一回やってみて。」
私はもう口笛なんてもうどうでもよかった。
しかし、もうどうしたらいいかわからず
とにかくそのナチュラルな指導に素直に従う。
「変に力が入ってるのかな…ねえ、桜谷さん。」
すると、君野は突然桜谷をまっすぐ見つめる。
それに次は何!?と構えていると
「好きだよ。」
ヒューー!!
と、その瞬間桜谷の唇から勢いよく大きな音が出た。
「あ!すごいすごい。上手だね。これからこの練習をすれば吹けるようになるかもね。」
とニマっと笑う。
その顔がイタズラをした無邪気な子供のよう。
私は前髪を大袈裟に手櫛でとかし、心を読まれないよう努めた。
なにこれ!なにこれ!?
どういうこと!?
と、実際はかなり取り乱していた。
「わ、わざと?」
「え?なにが?」
「何か、企んでる?」
必死に冷静を保とうとしたが、口調はうわずっていた。
「いや、別に。ただ桜谷さんの顔触ると色が変わるのが面白くて。」
そう小悪魔のように笑う。
その瞬間、桜谷の胸が跳ね上がるような感覚が走る。
その後、それから彼は口笛を決まって吹くようになった。
ヒューヒュー
私はその音に引き寄せられるように目を向けてしまう。
彼はそのたびにニヤニヤするのだ。
「桜谷さん、僕の口笛大好きなんだね。」
その言葉にまた心臓が跳ね上がる
彼がそんなふうに楽しげに笑いかけてきても、困ってしまうだけ。
冷静になれ!
と心で繰り返し呟くが実際には何をどうしていいのか、まるでわからなかった。
好感度をあげまくった結果
君野くんはこうしたどこか意図的なのか、天然なのか私を困らせるような小さな悪戯を仕掛けてくる。
なんで?これってバカにされてるの?
というか、なんで私が振り回されてるの!?
そう平静を装いながら心の中で喚く
彼の狙いが分からない。ただのからかいなのか、それとも、何か他の感情があるのか…。
どちらにしても、その答えを見つける余裕がなかった。
さらに問題はこれだけではない。
「!」
その午後、君野くんがいないと廊下を探すと、他のクラスの女子生徒に囲まれて話をしていた。
遠くから見ていても、キャーキャーとなにか盛り上がっているのがわかる。
その光景に、桜谷は
まるで実家が火事のように駆け寄る。
ダメだこのままじゃ…!!
せっかく事故でサッカー部の友達を失ったのに
今また作られてはまた同じ…
「君野くん!!!!」
その集団に割って入り、彼の腕を掴んで連行した。
ついたのは人気のない、2階の2年生の教室に続く階段の踊り場。
「どうしたの桜谷さん。」
「私以外の人と話さないで。」
「どうして?今のは談笑だよ。僕には桜谷さんだけだもの。」
「ダメ!!あなたは罪人なのよ。」
「罪人?どういうこと?」
君野はそう小首を傾げる。
「あなたがサッカーをしていた4月、…事故前の話よ。せっかく中学で再会できたと思ったら、あなたは私との幼少期の思い出を全部忘れてた!私を知らないと言ったの!!話しかけてもサッカーとその友達を優先して、相手にしてくれなかった!」
君野はその告白にきょとんとした顔が真剣になる。
「…ごめんね…。」
「あなたが怪我をしたおかげで隣の席の私をようやく認識したのよ。物を取ってあげたり、トイレ前まで連れて行ったり松葉杖をもってあげたりしてた…なのにあなたは怪我が治るとすぐにサッカーに戻ろうとして、だから私…私…。」
と、拳を握ったまま歯を食いしばり、全身を震わせた。
その光景に君野も黙り込んでしまった。
「だから誰にも話しかけないで。私、あなたがサッカーしていた頃に戻るんじゃないかと思うと嫌で嫌で仕方ないの。」
「不安にさせてごめん…。ちょっとからかいたくて。」
「どういうこと?」
「他の女の子に話しかけたら僕をもっと見てくれるかなって。」
「そんなことしなくていい!私はそういうの理解できない。」
「そっか…ごめんね。」
「…ごめんなさい。怒ってしまって。ただあなたがどこかに行ってしまうのが怖くて…。」
「じゃあ、仲直りしよう。」
このまま和解できると思った。
しかし、ここでもまた君野くんの予測できない行動が起こった。
「僕が桜谷さんのものだって証明するから受け取って。」
次の瞬間、彼の顔がぐっと近づいてきた。避ける暇もなく、唇同士が触れた。
その瞬間、
私の中でまるでほぐれた黒い糸が白い画面にじわじわと広がっていくような光景が浮かんだ。
違う…この人は君野くんじゃない!
一瞬にして、不快感が液体になって胸の中で広がる。
心の中で何かが弾け、突然、怒りが込み上げてきた。
言葉にならない感情が一気にあふれ、
無意識のうちに手が彼の頬を打つ。
自分を知らないと答えた、サッカーをしていた彼に対する怒りだ。
「っ!?」
華奢な彼が後ろに吹っ飛ぶ。
呆然としたまま、右頬を抑えたまま立ち上がりもせず、冷たい床に伏せた。
唖然としてしばらく黙っている。
やがて口を開いた。
「僕、わからない。桜谷さんが理解できない…。」
「あなたはもう二度と出てこないで…!」
その言葉に彼の目が潤んだ。
涙がボロボロとこぼれる。
「ごめん…ごめんね…でも嫌わないで…。」
と、弱弱しく私の黒タイツの足に縋り付く。
あれ?私、こんなふうに彼を追い詰めたかったんだっけ…。
違う…
私はただ…
思わずハッとする。
この狂った状況を
俯瞰で見てはいけないと思っていたのに…
校舎の2階、昼間の喧騒から少し外れた階段踊り場には、午後の日差しが薄く差し込んでいた。
遠くから聞こえる教室の笑い声や足音も、ここでは薄れた幻のよう。
私は崩れたまま、彼のそばにひざまずき、
そっとその肩に手を置いた。
触れた瞬間、君野くんの震えが一層強くなる。
まるでその痛みを自分の中に封じ込めているかのようだった。
一瞬ためらった後、私は彼を抱きしめた。
細い腕でそっと包み込むように、
崩れ落ちる彼の体を支えた。
その瞬間
彼は耐えきれずに声を上げて泣き出した。
静寂を切り裂くその泣き声に、胸が締めつけられる。
「神様は何故私に呪いのキスを授けたの…。」
目から一粒、涙が溢れる。
神様は悪趣味だ。
私にキスの呪いをかけ、人を愛せない様子を笑ってみている。
普通の恋がしたかった。
普通に彼の隣で笑いたかった…。
こんな私でも、そう思っていた時期があった。
それを叶えたいのに一人ぼっちで思いを抱え込むことしかできない。
叫びたい。
でも、その声は分厚い壁に跳ね返り、決して彼には届かない。
壁の向こうでは彼が皆と笑い合う声が響いている。
その声が、私の心を何度も切り裂いていく。
まるでサッカーを選んだ彼と仲良くなれなかった
あの頃のループを味わっているみたいだ。
もう普通になんて戻れない。
それなら私は――全てを支配する側に立つしかない。
そう、一粒の涙を流し、そう誓った。
「私は悪魔よ…。」
泣いている彼の後頭部を抑える手の爪が鋭く立つ。
その目は鋭く、目の前の君野の首筋に歯を立てる吸血鬼のようだ。
それでいい…
もう普通なんてさよなら
しかし
その選択が、どれほどの代償を伴うのかを
彼女はまだ知らなかった。
…
「なんかすげーもんみたな…。」
その一階の階段を登ろうとした一人の男子生徒が、目の前に繰り広げられた光景に驚いていた。
今は階段の下で2人がいなくなるのをチラチラとみながら待っている。
太眉を動かし、いつ終わるのかと待っているが、泣きながら抱き合っている2人が退く様子がない。
また頭の中で桜谷の衝撃のビンタシーンを回想し、
これは誰かに言うべきか、心に留めておくべきか…
と考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます