トイレの造花

 母と叔母が帰り、大きな安堵のため息をついた私は、さらにほっとするべく、現代社会で人間が絶対にひとりになれる個室へ。


 そこは、現代社会で人間がほぼ絶対にひとりになり、誰にも邪魔されない空間。


 が、私はその空間に入ったと当時に悲鳴を上げた。


「きゃあ!」


 私が驚いたのは、お化けでもなければ、ゴキブリでもない。


 トイレのタンクの上の水道の水を受ける部分に、めいっぱい飾られている造花だった。


 いや、なんでお花でそんなに驚いてるの? とお思いかな? が、皆さんは、ご存じだろうか?


 人はあるはずのものがないよりも、ないはずのものがあるほうが、何倍も恐怖を覚えるのだということを。


 犯人は叔母である。叔母の家のトイレやお風呂も百均で買った作り物の観葉植物や造花で飾ってある。


 人はこれを親切と呼ぶのか、ありがた迷惑と呼ぶのか。私にとってはただの迷惑、殺風景な姪の家のトイレを、華やかにしてあげようと思ったのだったら、おおいに大きなお世話である。趣味じゃないし。


 私は、躊躇なくその花をレジ袋に入れ、納戸に封印したのだった。






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