2 戦場を求めて

俺はギルドを出た。

背後からは罵声が聞こえていたが、振り返る気にもならなかった。


神威が宿る黒炎の霊刃とダイヤの魔石のブレスレットがあれば、俺は一人でも十分に戦える。

そう思いながら街を後にした。


夜になり、広がる荒野を歩き続けていると、神威が念話で問いかけてきた。

「これからどうする?」


「まずは戦場だな。戦える相手がいなきゃ、俺は生きている実感が湧かない。」


「強いやつを求めるのはいいが、無駄な争いを避けることも考えよ。」

俺は肩をすくめる。



その夜、俺は荒野で焚火を焚きながら休んだ。

夜空は満天の星で、静寂が包む。


翌朝、街道を歩いていると、ふと耳に飛び込んできた言葉があった。


「闘技場って蘇生魔法があるから命を賭けた戦いができるらしいぜ」

道端で話している商人風の男たちの声だった。


俺の心に響いたのは、その"闘技場"という言葉だ。


「命を賭ける戦いか…面白そうだな。」


神威が笑う。

「お主の耳には、この手の情報は実によく入るな。」


「興味がある話だけ、な」


俺は男たちの近くに歩み寄り、闘技場の話を詳しく聞き出した。


どうやらこの国の北東に位置する大きな町に、その闘技場があるらしい。


腕に覚えのある戦士たちが集まり、観客の前で戦い、勝者には莫大な賞金が与えられる。


闘技場には死んでも生き返る特殊な魔法がかけられていて、死ぬと1年寿命が縮む。


死の瞬間、寿命を1年差し出す代わりに蘇生魔法が発動、気絶した状態で生き返る、こんな仕組みらしかったが、俺はやられる側の思考は一切しないからこんなルールはどうでも良かった。


「面白そうだ」


「お主にはうってつけの場かもしれんが、注意しろ。生き返るとはいえ寿命を縮めるのには反対だ!お主以外には適合者はまずおらん、お主が死んだら我の旅路もそこで終わりとなる!」


「わかってるさ。」

俺は神威の忠告を受け流し、闘技場を目指すことに決めた。

それが俺にとって、新たな戦場になることは間違いなかった。


数日後、闘技場のある町に辿り着いた。


町全体が活気に満ちていて、酒場や市場では闘技場の試合の話題で持ちきりだった。


体中に傷跡があるバスタードソードを持った剣士、多数の魔法を操る魔導士、巨大な武器を振るう者――さまざまな戦士たちが俺の視界に入る。



素顔を隠すために

魔石を媒体として

錬金術を使い

漆黒の仮面を

生成した


いよいよ最初の試合の準備に入る。


「これが新しい戦場だ。試してみるか。」


俺は仮面をつけ、黒炎の霊刃を握りしめた。




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