実はSSSスキル持ちだった村人Aは、辺境の地を開拓しながらスローライフを送りたくて
@kurekyurio
プロローグ
第0話 最高級スキルを持つ村人
この世界は
人間が新たな土地を開拓し、新しい物を生み出す時代だ。
彼らは辺境な土地でキャンプを作り。未知の世界を冒険している。
キャンプが肥大化して、一つの村になることもある。
このアルクカナ村も、キャンプから出来た村の一つだ。
村の若者が斧を片手に、木材作りをしていた
赤くて薄い布服を着て、黒い短パンを履いている。
青い髪の毛の前側を、折れた角の様に倒した青年。
慣れた手つきで、木を折って木材にしていく。
「アルテ。今日も朝からご苦労さんガリ」
村に住む農夫が、青年に話しかけた。
アルテ。性はない平民である。自分の事を村人Aと例えている。
特徴がないのが特徴と考えており、目立つのを嫌う。
狭い世界しか知らない田舎者であるが、都会を知ろうと思わない。
それより自然の先に何があるのか。そちらに好奇心が向く。
だから開拓の最前線に立ち、村を広げるため働いてる。
「ああ。ジェンガの様に、カマボコしている」
アルテは汗をぬぐいながら、農夫に応えた。
「うん。相変らず何言っているか、分からないね。失格」
農夫はバツマークがついて、看板を掲げた。
マークを見た途端、アルテはガックリと肩を落とす。
「だって塩っ辛いもん……」
「はい。もう一回失格」
農夫は呆れ半分の笑みを浮かべていた。
アルテは働き者だが、村の中では少々地味な立ち位置に居た。
大きな物事を決定する訳でもなく。ただ開拓を営む。
発送などは発明家に任せて、自分は労働力とする。
手先は器用で鍛冶や、物作りが得意であるが、前には出ない。
そんな目立たない存在が、アルテと言う青年だった。
「おっちゃん。俺に絡んでいる暇があるなら働け」
「はいはい。分かっていますよ」
農夫はナスの入った袋を、アルテの近くに置いた。
「これはこないだ畑仕事を手伝ってくれた、お礼だ」
「ナスか……。すっぱいから、大好物だぜ!」
以前台風が来て畑が荒れた時、アルテが整備を手伝った。
農夫はそのお礼を言いに、ナスを届けに来てくれたのだ。
農夫は片手を上げて、来た道を引き返していく。
アルテは深呼吸をして、周囲の気配を伺った。
誰も居ない事を確認して。目にも留まらぬ速さで、木材を作る。
この世界ではスキルと呼ばれる特殊能力を、誰もが一つ持っている。
アルテはその力を発動したのだ。
だがアルテが持っているスキルは、素早く動けるものではない。
「さてと。今日のノルマも終わった事だし」
アルテは斧を飛ばして、立てかけた。
口笛を吹きながら、ハンマーと釘を片手に握る。
「また村づくりでも協力させてもらうか」
アルクカナ村。村と言っても、流れ者の集まりだ。
テントから建物が出来た程度で、発展度はまだまだ低い。
村と呼ぶには、圧倒的に設備が不足していた。
アルテもこの村に流れ着いた時、最初はテントで生活していた。
まだまだ建物が足りない。出来れば教会や鍛冶屋くらい作りたい。
そう思って、彼は常に素材集めを朝一に行っていた。
「次作るのは穀物庫か、工房かだな」
アルテは素材をバックに仕舞って、村の中心部に向かった。
そこには村の方向性を決める、委員会が設立されている。
アルテは所属していないが、素材を渡して良く取引をしている。
その際アイディアを求められることもある。
採用されたこともあるが、発言権は少なめだ。
いつも通り素材だけ渡して、適当に済まそうと考えていた。
離れた位置から中心部に向かう途中。
村人が集まっているのが見えた。興味本位で耳を傾けてみる。
「随分な騒ぎだ。折角だから、見物してやるか」
アルテは人だかりの方へ、向きを変えた。
隙間から何事か確認すると、地面に誰かが倒れていた。
ボロボロの白銀鎧を着た、赤毛ロングの少女のようだ。
騎士だ。上質な鎧を着ていることから、王都の者だろう。
村人が騒ぎになるわけだと、アルテは理解した。
こんな辺境の地に、王都の騎士が来るのは良くない時だ。
「ヘイ、旦那方。これはどんな騒ぎだ?」
アルテは近くの男性に声をかけた。
「見ての通りだ。騎士様がボロボロになりながら、村を訪れた」
「そして倒れて大騒ぎって訳か。笑える」
「笑えるか! 騎士様がこんなになるような、化け物が近くにいるって事だぞ!」
男性にリュックを預けながら、アルテは人込みを抜けていく。
少女に近づき、傷の具合を確かめる。
殆ど致命傷に近い一撃だ。ここまで歩けただけでも、奇跡に近い。
薬で助かる様な段階ではないだろう。
だから村人達が集まって、協議しているのだ。
騎士を死なせたくないが、面倒ごとは御免だという本音が聞こえる。
「しょうがねえな……」
アルテは少女を抱えた。村人たちが声を上げる。
「アルテ、どうするつもりだ?」
荷物を押し付けられた男性が、アルテを問い詰めた。
「怪我人は医者に診てもらうのが、道理だろ? 運ぶだけさ」
「医者って……。この村には風邪くらいしか見られないし……。その傷じゃ……」
「まあ、任せておけって! 面倒ごとは起こさないさ」
アルテは少女を担ぎながら、川沿いを進む。
その道は医者の家とは、逆方向だった。
「おい! まさか川に投げ捨てる訳じゃないだろうな?」
「違う違う。崖下に投げ落とすだけだ」
「もっとダメ!」
アルテは冗談を口にしながら、少女の脈を調べた。
弱いがまだ動いている。アルテは出来るだけ急いだ。
傷口が広がらない様に、来た道を引き返す。
自分の家に少女を連れて行き、布団に彼女を寝かせた。
致命傷になったであろう、腹部の傷に手を当てる。
「免許いらずなんだよね。俺、なんでもできるから」
アルテの手が葉っぱの様な、緑に光る。
すると少女の傷が、みるみる塞がっていく。
完全に傷口が塞がった後も、アルテは手を当て続けた。
「ベッドがなくてごめんね。俺、床で寝るタイプだから」
アルテは少女の脈を、再び測った。
先ほどよりも強くなっている。治療が成功したのだろう。
アルテはフッと笑いながら、少女に毛布を掛けた。
「後は君の体力次第だ。俺が治療したことは、忘れろよ」
アルテは少女を寝かしたまま、外に出た。
傷口から推測するに、モンスターにやられたのだろう。
それも狂暴で、鎧を避け切るほどの腕力。巨体を持った存在だ。
彼女が倒れていた位置から、モンスターの出現位置を把握する。
恐らく最近出来た、街道に現れたのだろう。
森を開拓しているから、エサがなくなったのかもしれない。
「さてと。治った騎士さんが、栄養失調で倒れたいけないし……」
アルテは自宅の倉庫へ向かった。
農具の背後。二重底になっている場所から、剣と弓を取り出す。
「何か食料くらい調達してやるか」
アルテは再びスキルを発動した。
付近の動物と視界を共有し、荒らされた形跡を探す。
「例えば巨獣の肉とかな」
鳥の目を共有すると、街道から外れた位置に巨大な影が見える。
森に隠れた巨大猿。鋭く血の付いた爪で、木を切り裂いている。
「ハンティングは専門外だけど。得意分野ではあるぜ」
アルテは周囲に見られない様に、こっそりと村の柵を乗り越えた。
森を迂回しながら、巨大モンスターの元へ駆け出す。
「まあ、美味しくなさそうだけど。奪った命に失礼だもんな」
アルテは青い光を纏いながら、高速で森をかけた。
彼のスキル。それは想像の創造。想像した力を、引き出せる能力だ。
スキルランクでは最高のSSSに、位置づけされる。
卓越したセンス。豊かな想像力。最高のスキル。
彼はこの村で、圧倒的な実力を誇っていた。
それを積極的に人に見せることはない。
「あまり遅いと、少女が怖がるだろうから」
アルテは森を歩く、巨大モンスターの目の前に辿り着いた。
モンスターは地面を揺らしながら、巨体で歩いている。
「三秒くらいで片づけてやるぜ!」
アルテは巨大モンスターに斬りかかった。
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