鷲掴まれる心臓
扶良灰衣
散文雑文20241214
気をつけろ、お前が生きている間に俺の爪は研ぎ澄まされていく、お前がどんな人間か、お前が何をしたのか、今に思い知る。さあ走り出せ、俺の爪が届かないところまで。今、お前が何をしてようと俺の牙は鋭く尖っていく。お前の血管から喉を潤す赤い血が溢れぬ(こぼれぬ)ように啜る(すする)のだ。お前の首に牙が食い込む時、神経は歯に絡まって解けない(ほどけない)筋張った肉は残してやろう、お前の肌から滲む体液は粘付き俺の顔を汚すだろうから。俺たちのことを忘れずにいるのか、お前がしたことが貴様の中で朧気になったら、その時はお前が吊るされた撚った(よった)綱を俺の首に撒き(まき)お前と俺の肉体を鈍麻させよう。魂の行き場所がお前と同じかどうか確かめてやろう。朽ちた肉体は畜生どもの腹に収まって、やがては何処か(どこか)を巡るのだ。死なんて境い目じゃない。ただただ何処かを巡るだけ。確かめようもないけれど、知った時には伝えようもない。だからこうなった、知らないからこうなった。今、知っていること全て、分かってないから、こうなった。永遠なんてなんてないから、無限じゃないから、有限だから、こうして在るんだ。どんなことかな今、在ることが、選べることって生も死も、どうして備わったんだろう。選べる自由も考えられて、なんで与えられたんだろうな。考えられる自由が、今、有るんだ。ここにいて在るんだよ。ほらね、今感じるだろう。ここにいること。
六本の指は
五本になって
心臓を直に掴んだ
脈動が始まった
一本の指は
心臓に喰い込んで
脈動に合わせて動く
ニルヴァーナに至る、その路が視つかったなら、正しく視えた、そのを方を迷うことなく連なる輪をくぐり抜け進むんだ。肘をつき臥しているその姿で何を想って何を現したのか、今彼は過去と現在、想いが及ぶ未来さえ、今から今が過ぎていくこの時間の巡り(廻り)さえ、この仔が走る、転んで泣いた、駆け寄って今までよりもきつく抱きしめ、この仔を視つめる時、それはその子に現在、過去、未来を同時に視ているんだろうから。
鷲掴まれる心臓 扶良灰衣 @sancheaqueous
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