大変!たぬきで異変

Hogero

第1話

11月中旬のこと、秋が深まるにつれて、

自宅にも落葉が目につくようになった。


夕方、出先から車で家に戻ってきた。


この時期になると、土曜日の6時は、すっかり暗くなっている。


止めておく場所は、邪魔にならないようにと、家の裏に決めている。


向きをかえるため、ハンドルをグルグルグルと回していると、

ヘッドライトの明かりに照らされて、

濃茶色の なにもの かが目に映った。


おもむろにブレーキをかけ、車を止め、目を凝らしてみる。


こっちを見ながら、四足でゆったり歩いている。


猫にしては、大きいです。


この風貌は、タヌキに違いない。


ただ、このシチュエーションだと、大抵は車を怖がって、

逃げるはずなのに、その様子がない。


悠々と歩き続けている。



そういえば、これと似たような事があったのを思い出した。


夏、気温が上がる前に終わらそうと思い、

朝から草刈機で、キャベツ畑わきの除草をしていた。


畑には整頓の為、野菜くず置き場を一角に設置している。

そこに近づいていくと、タヌキがいることに気がついた。


こちらを気にかける様子もなく、しきりに野菜くずを漁っている。


この草刈機というもの、起動すると、異常な爆音である。

耳栓をしても、うるさいくらいだ。


しかし、音に彼は動じない、われ関せずとばかり、完無視である。


近い距離(2メートルくらい)まで近づいても、変化なし。


こうなってくると、少しは反応してほしいものだと思いながら、

作業をしていたが、私が通り過ぎてもなお、

相変わらずゴソゴソとやっていた。



作業をつづけ、畑の境界まで来たとき、脇道を見ると、

道の真ん中を、歩いて去っていくのが見えた。


私は、タヌキの落ち着いた所作に、感服いたしました。


ライトに照らされた彼は、たぶん、同一人物に違いない。


考えてみると、野生動物の生活は、大変なのだと思う。


その日の食事を、その当日に探さなければならない。

みつからなければ、食べることは出来ない。


それに加えて、人とか、他の動物に攻撃されることもあるだろう。


これでは、毎日が大変だ。


サバイバルな生活だ。


そうだもの、私などの危害を加える恐れの無いものに、

関心を寄せないのは、当たり前か。


とはいうものの、このタヌキの落ち着いた様子は凄すぎる。

ある種の威厳を感じてしまう。


以前は、オドオド、セカセカしているのが普通だったのに、

これには驚きだ。


なにかの異変、人知れず、起きているのかも知れない。


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