第21話、コッカトライス、メイド種

「どうやら山の森にすむ、コッカトライスに異常があるようじゃのお」

「調べてくれんか?」

 メイドワーフチョーが言った。

 彼は、この街の冒険者ギルドのマスターも兼ねている。

 調査依頼を二人に出した。


「わかった」

「わかりました」

 アレクは、ルリの顔をちらりと見ながら言った。


「では行きますか」

「はい」

 飛竜である、”ジラント”の背中に、ルリさんをエスコートして乗せ、アレクも乗る。


 バサリ

 バサア

 

 ”ジラント”が二人を乗せ飛び立つ。

 


 ハイホー、ハイホー♪

 おうちに帰ろお♪


 メイド服を着たドワーフ、”メイドワーフ”の集団が、ツルハシやショベルを肩に担いで歩いていく。

 坑道から帰ってきたようだ。


 ジラントが頭上を飛び越す。


「……あれが、鉱石採取のプロ集団か……」

 アレクは、ワイワイと歩いていく、ひげ面で、ビア樽のようなメイド服の集団を、感心したような目で見た。


 

 二人は飛竜を飛ばし、街道沿いの森の上空に入った。


「あれを……」

 ルリが、アレクの背中越しに指差す。

「見つけた」

 アレクだ。

「でも普通のコッカトライスのようですね」

 

 姿は、蛇の尻尾の生えたニワトリだ。

 大きさは大型犬くらいか。

 黒光りするくちばし


「ふむん」

「もうちょっと調べてみよう」

「そうですね」

 その場を飛び去った。


 しばらく飛ぶと、


「きゃあ」

「むむ」


 森の木と木の間から巨大な影が現れた。


 頭にはホワイトプリム。

 ニワトリの胴回りには白いエプロン。

 腕が翼のため、ノースリープのエプロンドレス。

 ウロコに覆われた足のひざ下まで伸びるロングスカート。

 見るからに普通種よりも大きい。


「コッカトライス・メイド種っ」

「最上位の存在に進化してるっ」


「クエエエエ」

「クエッ、クエッ、クエッ(百八あるメイド殺法その1、メイドカーテシー)」

 流石、最上級メイド種だ。

 強敵を前に礼儀を欠かさない。

 コッカトライス・メイド種が完璧なカーテシーをした。


「「百八あるメイド殺法その1、メイドカーテシー」」

 礼には礼をもってかえす。

 二人は、一度地上に降りてカーテシーをかえした。

 すぐにジラントで空へ。


 ゴッファアアア


「ペトロ(石化)ブレスが来ますっ」

「ジラントッ、急速上昇っ」

 上空に逃げることで、ブレスをかわした


「どうする」

「倒しましょう」


 コッカトライスがメイド種に進化することで、ロックワームが街道の方まで逃げてきたようだ。


「メイ竜騎士ドラゴン体型フォーム


 二人は、ジラントから、”コッカトライス・メイド種”の近くに降りた。


「百八あるメイド殺法その64、”メイドスナイパーライフル”」

「狙い撃ちますっ」

 メイドの掃除道具は変幻自在だ。

 笹帚ささぼうきが、20ミリ対物ライフルにっ!!


 ガチャリ


 ルリが、”笹帚ささぼうきのコッキングレバーを操作。


 ガチャ 


 薬室に、”20ミリ対物弾頭”を送り込む。


「クエエエエ」


 ゴッファアア


 二発目のペトロブレス。

 霧状のブレスが放射線状に広がる。


「当たらなければどうということは無いっ」

「百八あるメイド殺法その23、メイドヨガテレポートッ」

「ヨガッ」

 アレクが一瞬でコッカトライスの懐に。


「その技まで使えるのっ?」

 ルリが驚きの声を上げる。


 アレクがメイドラゴンランスをコッカトライス・メイド種に突き刺した。


「クッ、クエエエエ」

 

「浅いっ」

「くっ」


 ガツッ、ガツガツ


 くちばしをメイドラゴンシールドで受けた。


「ここよっ」


 バッカアアアン


 ルリが”20ミリ対物ライフル型笹帚ささほうき”の引き金を引いた。


 ガイイイン

 

 黒いくちばしに当たり、首を跳ね上げさせた。


「ここおっ」

 アレクが、むき出しの喉にランスを突き入れた。

 

 この一撃がとどめとなり、コッカトライス・メイド種は倒されたのである。


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