第15話、メイドカーテシー
アレクは、なるべく音を立てずに静かに、ギルドの扉を開けた。
「こちらにメイドさんはいますか」
一瞬、ギルド内にいた人たちに緊張が走る。
商人の姿をした自分を見て、何故かほっとしたような雰囲気になった。
「ルリちゃん、今度こそメイドさんでないお客さんだよ」
――メイドさんでないお客さん?
――そんなに沢山のメイドさんがいるのか
少しワクワクした。
「むむっ」
少し離れた所にあるテーブルで、ギルドの職員とお茶をしているメイドさんを発見。
「ルリにお客さんのようね」
ギルドの職員だ。
「……? 何か御用ですか?」
怪訝そうにこちらを見てくる黒い瞳。
黒髪のひっつめ髪がエキゾチックである。
西方の主流は、金髪青い目。
祖国ではあまり見ない色だ。
「よ、良い」
少しの間、凛としたメイドさんの姿に見とれた。
「……ちょっとというか大分あやしくない……」
「……た、たしかに……」
二人の小さな声。
「あっ、いえいえ」
「百八あるメイド
自分の知る、相手に対して最も敬意を表す姿勢を取る。
例え、今は商人の姿をしていても
ジラントに止められているので、メイド
「えっ」
「メイド……」
「男……」
何故かギルドの中の人たちがざわめく。
ふふふ、メイド姿の自分を幻視しているのであろう。
「はっ」
黒髪のメイドさんが何かに気づいたように、テーブルの横に立ち同じ姿勢に。
敬意には、敬意で返す。
――ふふやはり、良い
美しい姿勢だ。
ではっ、いざ勝負っ。
「「百八あるメイド
自分たちは、同じタイミングで完璧なカーテシーをした。
「……うわあ」
職員の女性の声だ。
――ふふふ、両手でつまんだエアロングスカート
180センチ近い身長。
大柄な体格。
エアメイド服。
自分のカーテシーは、そう、まさに、”咲き誇る大輪の花”のように見えているはずだ。
対して、目の前にいる女性は、
純白のヘッドドレス。
真っ白いエプロンとシックな紺色のメイド服。
白い指がスカートの裾をつまむ。
「ほうっ」
自分の感嘆のあつい息。
まるで、一輪の、”凛と咲く百合の花”のようだ。
「……あなた、ヤルわね……」
メイドさんの小さな声。
自分は、その声に応えるようにカーテシーの姿勢を崩さない。
クスリ
小さく笑うメイドさん。
お互い何か通じ合うような空気が、周りに漂う。
「なんだこれ」
隣にいたギルドの女性職員が、何とも言えない声を出した。
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