第12話、メイド(ラゴン)ジャンプ

 愚かな王になるなら、”武器”を集めなさい。

 普通の王になるなら、”金”を集めなさい。

 賢い王になるなら、”メイド”を娶りなさい。


 メイドゥーン王国、初代国王、”イヴァン・メイドスキー”、建国セレモニーの挨拶より 

 

 遥か西方に、”メイドゥ―ン”と言う国がある。


 国土の半分を険しい山に囲まれた国だ。

 この山には竜の住処がたくさんあり、良質の騎竜の産地となっていた。

 強力な竜騎士団が有名である。

 しかし、この国には、他に、イ〇れた、もとい、ユニークな特徴があった。



 眼下には穏やかな田園風景が広がっている。

 今自分は、飛竜に乗って空を飛んでいる。


「どこかに、よいメイドはいないものか」

 自分は、相棒の飛竜の背中で小さくつぶやいた。

 飛竜の背中には大きめの鞍。

 鞍の後ろには色々な商品を載せている。

 自分の名前は、”アレク”。

 飛竜で行商の旅をする飛竜商人だ。


 ……表向きは、

 

 本名は、”アレクサンドル・メイドスキー”

 メイドゥーン王国の第三王子である。

 メイ竜騎士ドラゴンナイトだ。

 我が祖国、”メイドゥーン”の、イ〇れた、もとい素晴らしい特徴は、”メイド”を国是とし、国民全員が、”メイド好き”というものだ。

 国民の四分の一、女性の半分がメイドである。

 ちなみに、街には剣術道場ならぬ、”メイド道場”が乱立し、お互いのメイド殺法のしのぎを削っているのだ。


「自分は、メイドが大好きだっっ」


「たくさんのメイドさんに会うために、旅に出たくらいだものっっ」


 大空に大きな声で叫んだ。

 正確に言うと、メイド探しである。


 ―ふう―


 相棒の飛竜、”ジラント”が呆れたようにこちらを見てきた。


 ―やれやれいつものことか―、と言うところか。


「む」

 街道が見える。

 街道を走る豪華な馬車を、馬に乗った盗賊と思しき者たちが追いかけていた。


「助けるぞっ」


 貴人の側にメイドあり


 馬車にメイドさんが乗っているかもしれないっ。


「メイ竜騎士ドラゴンナイト体型フォームっ」

 特殊なインベントリから、

 メイドラゴンナイトメイル。

 メイドラゴンナイトシールド。

 メイドラゴンランス。

 が出てきて体に装着される。


 頭には、ホワイトプリム。


 メイ竜騎士ドラゴンナイトは特殊な職業ジョブだ。

 メイドを深く信奉する故に、頭にホワイトプリムを掲げるのである。


 メイドゥーン王国の初代王妃がメイド姿のドラゴ、ピ――

[システムエラーが発生しました。 セーブされたところまでロールバックされます]


 ――を掲げるのである。


 ヒラリ


 飛竜を急降下。

 盗賊たちの頭上へ。

 

「メイド殺法さっぽうその43、”メイド(ラゴン)ジャンプ”ッ」

 

 ズドオオン

 

 長大なランスを構え、馬に乗った盗賊たちに襲いかかった。

 メイドを信奉するメイ竜騎士ドラゴンナイトは、男性でありながら、メイド殺法さっぽうを使えるのである。

 さる、筋骨隆々のメイ竜騎士ドラゴンナイトは、すら使いこなすのだ。

 当然その性質上、エプロンドレス《メイド服》を着ていないと使えないぞ。


「うわああ」

「りゅ、竜騎士かっ」

「あ、頭にホワイトプリムッ」

「に、逃げろお」


 盗賊たちを追い払った。

 豪華な馬車が止まる。


 近くに飛竜である、”ジラント”が下りてくる。

  

「あ、ありがとうございました、ですわっ」

 執事に扉を開けられて、金髪縦巻きロールのお姫様が下りて来た。

「お礼がしたいので、我が家にお越しになってくださいまし」

 少しうるんだ目でこちらを見てきた。

 しかし、

 ――うむ、メイドさんがいないなっ

「いえ、礼には及びません」


「せめてお名前だけでも」


「名乗るほどのものでもございません」

「それでは失礼っ」

 飛竜に乗って飛び去った。


 ふむ、きれいな姫君であった。

 ――しかし、せめてメイドになってから出直してきて欲しいな


 とりあえず、メイド以外は、”アウト、オブ、ガンチュウ”のアレクである。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る