第3話、メイドインベントリ

 冒険ギルドの裏は広い運動場になっている。


「ここでいい?」

 私はギルドの解体人に聞いた。

  


「だ、出してくれ、ルリさん」

 解体人が言う。


 ”メイド”とは、清らかなる乙女を表現する最上の言葉であり、体現する存在である。

 

 乙女の最上位種である、”メイド”のスカートの中身。


 そこは、……神秘の領域だ。


 天上の世界、もしくは、桃源郷エルドラドにつながっていると言っても過言ではない。

 世の殿方がうかつにのぞき込もうものなら、昇天してしまわざるをえないのだから。



 自分のロングスカートを両手でつまんだ。


「百八あるメイド殺法さっぽうその17、”メイドインベントリ”ッ」


 ヒラリッ


 両手でスカートをひるがえす。

 一瞬、黒いショーツとガーターベルトが……見えないっ。


 ズズウン


 私は、スカートの中からを取り出した。


 視界に広がる、半ばまで首を断たれたドラゴンの死体。

 ちょっとした小山くらいの大きさだ。


「ひえええ、相変わらず強烈だなあ」

 解体人が肝を冷ましたような顔で言った。


 改めて、私はスカートを両手でつまみ、解体人に完璧なカーテシーを返した。


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