第2話 転生?絶体絶命!!

「おいっ、どうしたっ!?はやく、ポーションを持ってこい!!……くうっ、ニーナ様、ダメだ、死ぬな……あなたはまだ成し遂げていないっ!……ぐう、神よ!!どうか、どうか…奇跡を!!」


倒れ伏すこの国の第一王女ニーナ・ルアナ・フィラリール。

彼女は隣国であるザスルト王国との停戦協定を結んだ帰りに、何者かにより襲撃を受け瀕死の重傷を負っていた。


雨の降りしきる中、まるで命が無くなるかのように熱を失っていくニーナ。

抱き起こし必死に声をかけていた近衛兵長リギナルドは歯を食いしばる。


今回の公務は極秘だった。

フィラリール王国は今力を持つ貴族院に牛耳られ、まさに民たちは混乱の最中で苦しい日常を余儀なくされていた。


貴族院の首長であるメライダ公爵。

ニーナ姫の叔父にあたる人物だが彼はあり得ないほど強欲だった。


「おいっ、どうした?返事を……ぐうあっ?!!!」


ニーナ姫を抱きかかえる近衛兵長リギナルドの背中に、炎の魔法が着弾する。

その衝撃でニーナ姫を手放し、そしてニーナ姫はガケから転落してしまう。


「ふん。往生際の悪い奴よ。さっき死んでおればこれ以上痛い目を見なくても良かったものを」


そう言い姿を現すローブを纏う男たち。

その先頭の一人がおもむろにフードを上げその顔をさらす。


「っ!?なっ?!!……き、貴様……メライダ公爵の……」

「ほう?まだしゃべる事が出来るか……流石は我が国の近衛兵長。素直に称賛しよう。……まあ二度と会話する機会はないがな」


そう言い手を上げるメライダ公爵軍、軍長の一人アーノルド。


「痕跡を残すな。確実にやれ」

「「「「はっ」」」」


そして紡がれる紅蓮の炎の魔術。

体を焼かれる痛みに悶えながら、リギナルドの意識は闇に落ちていった。



※※※※※



「………うう?……ここ、は??……っ!?痛っ?……うう、呼吸も苦しい?!…かひゅっ?!!」


雨が降りしきる寒い森―――

私はなぜかどこかから落ちてきたように枯れ果てた雑木の枝に体を絡ませていた。


何より私……

大怪我してる?


今だ経験したことのないような痛みに、思わず涙がにじんでくる。

しかもとがった枝が、私のお腹に突き刺さっていた。


どくどくと流れ出る赤黒い大量の血。

これって……


私転生直後なのに死にそうなんですけど?!


かなりパニックになっていると、遠くから誰かの声がし、だんだんと近づいて来た。

助けかな?との期待は一瞬で否定される。

死にそうな私はさらに絶望に包まれた。


「おいっ、いたか?見つけたら好きにしていいそうだ。……どうせ殺すんだ。へへっ、あの姫さん、エロい体してるからなあ。最悪死体でも犯してやる」


ひうっ?!

なに?

私殺されそうになっていて、しかも凌辱されるの?

ねえ、お爺さん、いくら何でもハードモード過ぎないかな?!


『………ね、え…』


突然頭に響く声。

私は思わず呼吸を止め、自身の頭に集中した。


『……にげ…て……ペンダント……魔力…こめ…て』


「っ!?ぺ、ペンダント?…あうっ?!」


ペンダントを探ろうと腕を動かそうとすると激痛が全身を支配する。

どうやら骨が折れているようだ。


『……は…やく……私……けがされ……たく……な…い…』


(私だって嫌だよ?初めては…誠に……って、それどころじゃない!?)


痛みに歯を食いしばり、どうにか動いた左腕で胸元のペンダントを握りしめる。

そして気付く。

私魔力なんて……知らないけど?!!


(ねえ、掴んだよ?どうするの?)

『……あなた?……集中して……私……が……』

(うあ?!!……体が熱い?!!!……ひゃん?!!)



全身を包むかつて経験したことのない暖かい膜の様なモノ。

これが魔力?


そう思った瞬間、私は豪華なベットの上で、さらに襲い掛かってきたあり得ない激痛に意識を手放した。



※※※※※



夢を見ていた―――――

とても甘酸っぱくて、心躍る夢―――


彼が、木崎誠君、私の大好きな幼馴染の誠が、私の告白してくれる夢。


『俺さ……真琴のこと……そ、その……だから里帰りが終わって帰ってきたら……返事聞かせてくれ』

『う、うん』

『うあ、え、えっと……気を付けてな?……じゃあな』


私が死ぬ前日。

小さなころから家族みたいにとても距離が近かった彼。


初めて見る顔を染めて少し怖がっている顔。

私は凄くときめいていたことを思い出す。


会いたい。


私はそう強く望み、深い所へと意識は消えていったんだ。

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