第28話

たけど、彼女だけは違う。

アリスはこんな空気屁でもない。


「伯父様、今日はこれで失礼しますね。こちらで騒がしくしてると皆様にもご迷惑がかかりますし。クラブの品位を落とす行為は本意ではありません」

今の状況を興味津々に見ていたクラブの客達をぐるりと見渡しアリスは微笑んだ。


「あ..ああ。そうだね。どうだい? 一緒に飲まないかい?」

周囲を見渡してから頷いて微笑んだ上垣内氏。

隣に座る彼の息子は嬉しそうに微笑む。


「いいえ。今日は由來の仕事でやって来たのでご遠慮します。彼の仕事の邪魔はしたくないんです」

ペコッと頭を下げたアリス。

筋が通ってるアリスの言い回しに、タジタジの上垣内氏。

この人を知る人は、こんな彼を見たことないだろう。

ほんと、アリスって凄いよ。

日本の重鎮をこんな風に軽くあしらうなんてね。


「ワハハ..そう言われたらもう遇の根も出ないよ。分かった。改めて食事の日を段取りしよう。必ず連絡を入れるから来ておくれよ?」


「はい、伯父様。楽しみにしてますね」

そして、こんな風に愛らしく微笑まれたら、上垣内氏じゃなくても全てを許してしまいたくなるよ。

周囲の客から漏れでた溜め息。


「宇佐美君と言ったね?」

上垣内氏の視線は鋭く変わって由來に向かう。


「亜理子を頼みますよ。この子は義理姉が大切にしていた孫娘だ。私の孫だと言っても過言じゃない」


「はい」


「大切にしてやっておくれ。そしてこの子の為ならば上垣内はどんな力添えも惜しまないと言う事を忘れないでほしい」

上垣内氏の目は嘘なんて言ってない。

もちろん、その場のノリで出た言葉でもない。


「肝に命じておきます。亜理子を俺の手で幸せにすることを誓います」

由來は真摯に答えていた。

そんな由來に、周りのキャストの女の子達は悲鳴にも似た吐息を漏らす。

アリスは少し照れ臭そうに由來を見上げながらも、どこか嬉しそうだ。


「君は頼もしい男だ。では次回会うのを楽しみにしたいるよ。アリス、連絡するからね」

由來に向かってた視線は柔らかいものに変わるとアリスへと向いた。


「はい。伯父様。では、失礼します。由來行こう」

アリスはとても綺麗に頭を下げてから、由來へと視線を向けた。

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