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「じゃあ朝ごはんにしようね、猫ちゃん」と風は言った。

 先ほどの大麦先生たちの会話や、今の風の発言から、ぼくは現在の時刻が朝の時間帯であることがわかったのだけど、しかし外は暗いままだった。もしかしたら、この世界では朝も昼も空に太陽は顔を出さず、ずっと真っ暗なままなのかもしれなかった。窓の外に降る雪も昨夜からずっと降り続いたままだった。

「いただきます」

 風は手を合わせてからそう言うと、丸いパンを一口サイズにちぎって、それにバターをぺたぺたと不器用に塗りながら、小さな口を大きく開けて、もぐもぐとパンを食べ始めた。ぼくはそんな風を見ながら、器用に舌を使ってお皿の中のミルクを飲み始めた。

 風の食事はとても質素なものだった。丸いパンは少し大きめだったけど、おかずはミートボールだけで、ほかにはスープとサラダとミルクがあるだけだった。それは小学校で見る給食よりも量が全然少なかった。ぼく自身も、あまりごはんを食べるほうじゃないけれど、これでは幾らなんでも量が少なすぎると思った。野菜は多めだけど、栄養だって全然足りないのではないかと心配になる。もっとも風にとってはそれは当たり前の風景のようで、ぼくに向かって「猫ちゃん。ミルクだけでお腹いっぱいになる? パンも少し食べる?」とか言ったりするくらいだった。

 ぼくは嫌そうな顔をすることで風の提案を断った。ぼくの朝ごはんは確かにミルクだけだったけど、猫になったぼくにとってはそれだけで十分お腹がいっぱいになることは、昨日の夜に証明されていたことだった。

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