異世界ロック無双
新有機
第1話 Smells Like Teen Spirit
「なぁ、そろそろ出ていってくれないか?」
朝の穏やかな日差しとは裏腹に、ある男がそんなことをいってきた。
「……?なにいってんだ。もうすぐ売れるからあと少し我慢しといてくれよ。あ、あとおはよ」
「あぁ、おはよう。それよりいい加減売れてくれないと、ただでさえ最近結婚して引っ越しして金がないのに、こっちもお前のための生活費とか出さないと行けないからかなり金欠なんだよ。もう夢見るのやめて普通の職に……」
「いや!それはできないね。大丈夫よ。俺って結構才能あるし、実際最近になってそこそこ客集めてきてるから」
「はぁ…本当なのか?」
「あぁ、そうとも、というか俺は今からバンドメンバーに会うから出かけるよ」
そう言いながら髪のセットもせず、とっとと靴を履いて玄関に立った。
「じゃ、一発かましてくるわ」
そういって家を出た。俺の名前は松永こうき。バンドではギターをしていて、そこそこの才能があると思っている。というより、そういう自信を持ってないとこの業界で売れていけない。でもそれでも売れるのは難しく、まだ小さい箱すらも埋められない。
「でも、実際あいつの言う通りにちゃんとした職についたほうがいいのかな……」
いかんいかん。そんなんじゃないだろ俺は。もっと天才だろ?作曲だってできるし、まだまだ時間はあるんだ。焦る時じゃない。それに、今俺たちのバンドは危機的状況に陥っている。
そう。ドラマーとベーシストがいないのである。
一昨日全然売れないしバンドやってて楽しくないって言い出してバンドを抜けた。しかも二人もだ。
今俺たちのバンドにはボーカルと俺しかいないという完全に劣化版テツandトモ状態。こんなのでいいんだろうか。
「はぁ、空からドラマーとベーシスト落ちてこねぇかな」
そんなことを呟きながら横断歩道を歩こうとしたその時
「あなたっ!逃げて!」
右耳の方から人妻の声が聞こえた。
「おいっお前!上見ろ!」
左耳からは20代ぐらいのサラリーマンの声が聞こえた。
うるさいなぁと思いつつも。試しに上を向いてみた。
「……え?」
ドチャッ
その瞬間自分の古頭部にドラムセットとベースが落ちてきた。
楽器本体は求めてねぇよ
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