第2話 異世界

………

……

「ゔぅ…」


けんたろうは意識を取り戻した。

あの感覚が腹部にまだ残っている。

何とも言えない感覚である。


「ん?ていうより、生きてる?」


最初こそ、気持ち悪い感覚に襲われていたが

周りの状況が鮮明になっていくにつれて、気持ち悪い感覚が上書きされていく。


「なんだここは。夢か?三途の川か?」


けんたろうは現世とは隔離されていたような幻想的な場所にいた。木々からはこぼれ日がさし、川は透明度が異次元。空気もおいしい気がする。

「死後の世界ってこんなんなんだ。…へぇー。

でも足あるんだよなー。取り敢えず、どこに行けばいいかわからない。同志をはいるだろうか。見つけて聞いてみよう。」


けんたろうはここを死後の世界と勘違いしているようで、異世界に転生されたとは夢にも思っていなかった。


………。

「誰もいない。何もない。おれにどうしろっていうんだよ」

「なんで死んでまで、こんな思いをしないといけないんだよ……。どうせ死んでるからどうなってもいいか。そもそも誰かいるの?」


ぐるぐる思考が駆け巡る。

色々考えても、よくない方向に考えてしまう。

「はぁ〜」

取り敢えず、歩くか。


幻想的な景色はどこへやら。

歩いているうちに草木がうっそうとしている場所に迷い込んだ。

草は腰辺りまで生え、木は苔が生えている。

「進む方向ミスったな」

そんなことを思いながら進んでいくと


一部の草が音を鳴らす。

[ガサガサ]


「ビクッ」

けんたろうは驚き、硬直する。


草の音がした方向を見ると、角の生えた兎が跳んで逃げていくのが見えた。

「なにあれ?兎に角が生えてたよな。おれが知らないだけか?聞いたことも見たこともないぞ。新種?名前おれがつけていい感じ?………定番のホーンラビットにしよう」


そしてけんたろうは思う。

ここは本当にあの世なのか。


空を見ると大きな鳥が飛んでいるのが見える。よくよく見てみると、

「え?あれも鳥じゃなくね??ドラゴンじゃね」

けんたろうは薄々気付き始めた。


「異世界?」

けんたろうは元の世界で読んでいたラノベを思い出す。

『魔法の世界えーなー。右手から風魔法、左手から火魔法、合わせてドライヤー。』

『異世界に転生したらマヨネーズや化粧品で大金持ち』


いろんな場面を思い出すが、力の足しになるようなものはない。しかも、転生する際に神様とか普通会うくない?

あってないんてすが……。


気配を消し、息を潜め、とにかく前進。好戦的な獣に会ったら終わる。

身をかがめ進むと、

一人の女の子が、山菜を採っている。キノコか?

「第一村人発見」

心踊るような思いで女の子に話しかけようとするとはしりだすが、真向かいの方向。一般的な、猪も女の子に迫って来ている。


『ヤバい』

どうにかしないと女の子が危ない。

ていうか、女の子がよければ正面衝突となるのは俺だ。

『イヤイヤイヤイヤ』

「避けてー。でも避けないでー」

と、けんたろうは叫びながら走っていくと

女の子は火の魔法を使い、猪に向けて放つ。


『ピューン、ドーン』


女の子が放った火の魔法は見事猪にあたった。


けんたろうは

「な?!手から花火?手から打ち上げ花火やん」

魔法というより花火に見えた。


女の子はこちらに向かって

「大丈夫ですか?」と話しかけてくる。


明らかに警戒をしているが、心配もしているようだ。

というのも、猪を倒したあと、私もコケたのだ。

私は女の子に会ったことよりも、手から花火が出たことが気になっていた。


「大丈夫です。すいません」と答える。


女の子は一呼吸おいて、

「どちら様でしょうか」

と話しかけてきた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る