カヌーのお稽古
@nakamayu7
第1話 そもそもの始まり
ベランダのサッシ窓から冬の日差しが差し込んで、ぽかぽかと暖かいある休日の日曜日のこと。マンションの私の部屋には対流型で小型の灯油ストーブがあって、今はその上に置いた薬缶からシュンシュンと湯気が出ている。エアコンもあるんだけどオール電化でないこの古いマンションは火気厳禁ではなく、灯油やガスの暖房器具、調理器具が使える。私は小型犬を飼っているので、ペットも可のこのマンションはちょっと古いけど家賃や広さ、交通の利便性など総合的な評価としては概ね気に入っている。
私はソファーに寝転んで旅行雑誌を見ていた。ソファーの横には胴体が黒で前後の足先と顔部分が薄茶色のウェリッシュ・コーギーの「クマ」がお腹を上にして寝そべっている。ときどき寝言を言うからたぶん熟睡しているんだろう。
旅行雑誌の春の旅行の特集ページでは、カヌーに犬を乗せてゆったりと川下りをしている男女カップルの写真が掲載されていた。犬種は分からないが中型の犬がカヌーの舳先に雄々しく立って前方を見つめ、男女の2人は笑顔でゆったりと『オール』を漕いでいる。春の日差しが2人を照らし、背景の河原には黄色い、たぶん菜の花と思われる、花が咲き乱れている。
菜の花が咲く川岸に上陸してキャンプ用のコンロでお肉を焼いたりスープを作ったり。食後にはドリップ式のコーヒーを淹れて折り畳み式のキャンプチェアーに座って優雅に川面を見つめて過ごす2人。ワンちゃんも一応リードは付けてるけど、広い河原を自由にお散歩して楽しそう。撮影場所を見ると高知、四万十川とあった。
「いいなあ。クマと2人でこんなことできたら楽しいだろうなあ」
そう思ったことがそもそもの始まりだった。
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