上機嫌になった彼が言った。


「つまみが欲しいな」

「煎餅はないですよ」

「冗談きついのう。そんなもん酒に合わせるやつなんかいるかよう?」

「いたんですよ、さっき」


 せっかく美味しく酒の飲める大人になったのに、鹿もこのチンパンジーも、なんで自分が正しいと思い込んで、知らず知らず殻に閉じこもったりするんだろう?


 僕は自分が自由であると分かってから、やっと生きていて楽しいと思えるようになったのに、さっきの鹿もこのチンパンジーも自ら動物園にある窮屈な檻の中へ入り込もうとしているかのようにさえ見える。


 でも、それ自体が僕の決めつけかもしれないな。

 自由であることに価値を置かない人は、決まっている方が楽に違いない。


「よっしゃ、また来るわ。今度はしっかり頼むぞい」

 そう言ってチンパンジーは帰っていった。

 時々不愉快そうにしていたわりに、また来る気らしい。


(変なの)


 僕は、思わず肩をすくめた。

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