乙女ゲーの世界に男の娘として転生してしまったのだが、ヒロインと百合にならないとラスボスを倒せないらしい。詰んでる。オワタ。もう遅い!

園業公起

第1話 驕傲駆逐させてやるよ!

 絶望とは愛されないことだと知ったのは乙女ゲーのせいだった。


「男の娘はサイコーだねぇ」


 汚いおじさんが僕に。


「女の卑しさが漂白されているのに女性美だけがそこにはある。歌舞伎の女形もそうだよね。本当に推しに推してしまうよ。お、おおお!」


 おじさんはお金をくれた。


「次に会う時までにこのゲームをやっておくんだよ。女の欲望を理解したうえでちゃんとおじさんとなかよしするんだよぅ」


 渡されたのは携帯ゲーム機と乙女ゲーム。僕はそれを言われたとおりにやった。


「なんで私は捨てられたの!金髪青目の白人と付き合って勝ち組だったのに!あんたができちゃったせいでしょ!もっと金を持ってきなさい!」


 母さんは惨めで愚かな女だった。男で良かった。こうならなくて済むんだから。


「そっか。一番いい人とくっついて周りを虐めたいんだ。やだなぁ」


 乙女ゲーをやった感想は絶望の一言だった。母さんは僕を愛してないし、もの扱いするのは価値のある男に捨てられたから心が駄目になったせい。


「君の目ってほんとキレイだよね。付き合ってる人とかいる?」


 僕の蒼い瞳と金色の髪に女の子は価値を覚えるらしい。それをルッキズムというのかレイシズムというのか僕にはわからない。


「今日はおじさんの御友達のおじさんも連れてきたからね。二倍いいや四倍出すよ」


 上も下も痛い。前も後ろも気持ち悪い。右も左も気色悪い。そして僕は歌舞伎町のホテルを出て地雷系の女子に声をかける。


「それ僕に頂戴」


 地雷系の女の子は頬を染めて渡してくれた。僕は風邪薬を一杯飲みこんでそれを酒で流し込んだ。さようなら。


























こんなにかわいい子が女の子のわけないじゃない!




だから転生!即転生!








はい!転生!転生!ゲーム転生!


ハイ!チート!チート!ゲーム知識でチート!無双!俺、じゃなかった僕TUEEEEEEEEEEEEEE!!!



「煩いんだけど」


 やっと起きましたか!


「だから煩いよ」


 ダメダメそのまま寝たら死んじゃいますよ( ´艸`)


「煩わしい」


 言葉遊びはやめてください!あなたには転生してもらいますぁ!


「鬱陶しい」


 チートはあげますから!興味持って(嗤)


「いい加減にしてくれない?」


 あなたにはこのあいだおぢから貰った乙女ゲーの世界に行ってもらいまーす!


「僕はバカじゃないから君を神とか女神とかって考えないよ」


 それでかまいませーん!とにかくあなたには乙女ゲーム世界でがんばってもらいまーす!「Query A Quest」略してくえくえの世界で頑張ってもらいまーす!


「売れたゲームだけどクソゲーじゃん」


 そりゃあんたが男だからでしょ。女の子にとってはサイコーのラブロマンスファンタジーですよ!


「そうすか」


 もっと元気出して!もしあなたがあの世界をクリア出来たらどんな願いでも叶えてあげますよ!


「悪魔の誘惑にしか聞こえないな」


 まあいいじゃないですか。もし頷いていただけない場合は自殺未遂で処理して現実に戻っていただきます。一日入院して再び元の生活が待っています。どうです?逃げたくないんですか?


「…ふぅ…いやなやつだなあんた。いいよ。わかった。ゲームの世界に転生する。あそこにはもう戻りたくない」


 はい!ではでは!転生頑張ってください!だけどあなたとヒロインが百合にならないとラスボス絶対に倒せないので注意してくださいね。あとラスボス倒せなくても現実に戻しますからそのつもりで!


「は?今なんつった?」


 ではレッツ転生!ひゃっはー('Д')





































('Д')<ただ搾取されるだけのお前に与えよう!















(。-`ω-)<驕傲きょうごう駆逐くちくさせてやるよ!

















































 そして僕はゲーム世界に転生した。どこかの路地裏らしい。だけど。


「外見変わってねぇ…」


 近くにあった窓ガラスを覗く。金髪に青い瞳。自分で言うのもなんだが絶世の美少年。でもなぜか恰好だけ主人公たちが通う学園の女子の制服だった。あと髪の毛が長くなっていた。


「ウケる。わけないだろ。なんで女子制服?」


 ポケットの中を漁る。女子女子した財布と学生証が入っていた。ちゃんと僕の顔写真が張ってあって、名前も書いてある。



Harlow Ryan

ハーロウ・ライアン


という名前が与えられたらしい。性別欄には女子とちゃんと書いてある。生年月日の年は主人公と一緒だった。


「これで学園に通えってことかよ…ふざけてんなぁ」


 でもこの世界に身分証明がない以上僕はこれを使うしかないのだろう。


「ここは学園のある王都で間違いないだろう。とりあえず学園に向かうか…」


 僕は表通りに出て歩き出す。周りの人たちが僕を見てひそひそと言ったり、男女問わず頬を染めたりしている。なんで僕の外見は異世界に行ってもそのまま目立ってしまうのか…。なんとも穏やかな展開は遠そうに思えた。











 





 学園についた。立て看板に入学式って書いてあった。


「どんぴしゃかよ。僕にもう少し配慮があってもいいのでは?」


 愚痴っても仕方ないので、案内係をしている兵隊さんたちの誘導にしたがって講堂に向かう。そのときだった。ぱんっという。音が響いた。


「俺の頬を張った?!王太子なのに?!」


「あなたは間違っている!わたしは許さないわ!」


 あー原作キャラだーてか主人公だー。しょっぱなの全ルート共通のイベントである王太子の頬っぺた叩いて決闘。私TUEEEEからのおもしれー女!展開だ!


「このお転婆女め!名を名乗れ!」


「わたしの名はレメディオス・レチェ!必ず勇者になる女よ!」


 らしいですね。はい。そこ聖女ちゃうんか?っていう変化球。でもまあ聖女も勇者も記号としては大してかわらないか。選ばれしものってことなんだからね。


「決闘!いいや懲罰だ!お前に女としての徳を仕込んでやる!」


 王太子イイ感じでイキっております!対して主人公のレメちゃんは余裕そうです!まあここで負けるとゲームオーバーなんだけどね。さてどう動くか?とりあえず僕は何らかの形での介入を模索することにしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る