【石川県 S市 K山】中尾正輝の体験
《メール送信者》中尾正輝
《発見日時》1947年 正確な日時は不明
これは、僕の祖父(中尾 小五郎)が体験したというお話です。
10年ぐらい前に聞いた話で、少し時間が経っているので多少忘れていたりしますがご了承ください。
僕の祖父は5年前に肺炎で亡くなりました。戦争孤児で身寄りのなかった彼は、母親が親しくしていた松原さんという方の家に養子として迎えられ、彼らの実家がある石川県に疎開したそうです。戦後、彼は農家の養親の手伝いをしながら稼いだお金で学校に行かせてもらっていたそうです。
松原さんの実家の近くには低山があるのですが、そこには昔から神様がいるから入ってはいけないと言われていたそうです。何の神様が祀られているのか気になり尋ねてみたそうですが、その神様は一人ではないらしく、名前もないというのです。
当時はインターネットは愚か、本も満足に買えなかったので、そのK山に纏わる伝説を知る術がありませんでした。なので彼は、関わりのある人一人一人に聞いて回ったそうです。
その一人、長嶺さんという老人が、昔そのK山に猟をしに行ったことがあり、その時に経験したことを話してくれたと言います。
その日、長嶺さんは猟仲間と一緒に猪狩りに行っていたそうです。その当時から既に『得体の知れない何か』が出るという噂は聞いており、どうせ浮浪者と見間違えたのだろうと軽く考えていたといいます。
⬛︎⬛︎(私の名前)さんは、ネットか何かで『アガリビト』という怪談を聞いたことがありますか? 山に登って自然に返った人たちを総称してアガリビトと呼ぶらしいのですが、話を聞いているとそれに近いようなものでした。
そのK山では、古くから満月の夜に人間が山に入ると、真っ黒な化け物に連れ去られてそのまま帰って来られなくなるというお話が言い伝えられているそうなんです。その連れ去られた人間は黄泉と現世の狭間の世界に行き、やがて人ではなくなってしまう。全ての人間がその世界に行けるとは限らないそうで、選ばれなくてはいけないようで、何か条件があるみたいです。
一説によれば、その真っ黒い化け物は連れ去られた人間の慣れ果てで、異界の狭間から現れては人間を連れ去ろうとするとか……
例の張り紙がしてある場所の付近で黒い人を見たという方の話を見ましたが、もしやと思ってこのメールを送った次第です。
もし彼らなのであれば、絶対にそこに近づいてはいけないし触れてはいけないと祖父は言っていました。その張り紙は、彼らから人間を守るために現れてくれているもので、粗末にしてはいけないと……
僕が聞いた話はこれで以上です。もう祖父は亡くなっているので、ここまで詳しく知っている人間がいるとすれば、僕ぐらいならものではないでしょうか?
噂の真相が解明されることを願っています。
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