明日

@337652

寝台の上

 頭が重い。吐きそうだ。訳もなく焦っている。どうも体が動かない。頭もうまく回ってくれない。やるべきことを放り出している。果たすべき義務から逃げ続けている。布団をひっかぶってそこから出たくなくなっている。朝日を浴びるのを怖がっている。仕損じたことを仕損じたままにしている。逃避に限界があるのを知っている。身じろぎできないでいる。ただ時間が過ぎるのを待っている。現状を打破できないと思っている。気持ち悪い。胃がむかつく。思考に靄がかかっている。視覚から何の情報も得られない。布団の感触が不快だ。何の臭いもしない。鼓動と地鳴りのような低音が一体化していく。世界の音がそれだけになる。天井を見る。影のような染みが視界を横切っていく。ふらふらと飛んでいく。何も考えられない。脳が単なるタンパク質と脂質の塊になる。今死んでいる。呼吸をする。音は響かない。周囲を捉える。新しい情報はもたらされない。文字が認識できない。意味がないかのように目が滑る。形に意義を見出せない。ただそうある。体が無に近づいていく。痺れと硬直が体を定義している。また天井を見つめる。川の流れ。不規則な防音加工。本の背表紙はもう読めなかった。瞬きが増える。ここからどう出ればいいか分からない。ただ停滞の中にある。明日を考えられないでいる。破綻に名前を付けようとしている。考えられないことを考える。崩壊するものもなくなる。何もなくなって途切れた。

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