『君と出会った時代の約束』 ~タイムスリップ、イケメン、そして運命の恋文~
ソコニ
第1話「祖母の遺品と不思議な手紙」
祖母の遺品整理は、私にとって想像以上に感傷的な作業だった。
部屋の隅に置かれた古びた箪笥を開けるたび、懐かしい香りが漂う。着物や写真、思い出の品々が、まるで祖母との思い出を全て詰め込んだタイムカプセルのようだった。
「美咲、こっちにも段ボールがあるわよ」
母の声に振り返ると、埃っぽい段ボール箱が何個も積まれているのが目に入った。高橋美咲、25歳。就職して3年目の私は、週末を利用して実家に戻り、先月他界した祖母の遺品整理を手伝っていた。
「ねえ、これ見て。おばあちゃんの若い頃の写真よ」
母が差し出した古いアルバムには、凛とした表情の若い女性が写っていた。懐かしい祖母の面影と、どこか見覚えのある別の何かが混ざったような不思議な既視感。
段ボールを開けていくと、一番下から古びた木製の小箱が出てきた。蝶の模様が刻まれた小箱には、5通の手紙が大切そうに収められていた。それぞれ異なる年代の封筒に、美しい筆跡で宛名が書かれている。
「これ、開けても大丈夫かしら」
「おばあちゃんの遺品なんだから、読んでも構わないんじゃない?」
母の言葉に背中を押され、最も古い封筒を手に取った時、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、美咲ちゃん!久しぶり!」
開けた玄関には、幼なじみの加藤春樹が立っていた。大手新聞社に勤める彼は、相変わらずさわやかな笑顔で、両手にコーヒーを持っていた。
「春樹くん...」
懐かしい顔を見た途端、手紙のことも忘れて胸がときめいた。しかし、それは始まりに過ぎなかった。その日の夕方までに、残りの幼なじみ4人も次々と現れたのだから。
画家の南部匠、お菓子職人の西園寺光、古書店を営む村上翔太、そして企業経営者の東条裕也。幼稚園から高校まで共に過ごした5人が、まるで約束でもしていたかのように集まってきた。
「みんな、どうしてここに...?」
5人は口を揃えて言った。「なんとなく、来たくなって」
その時の違和感は、後になって理解することになる。手紙を持つ手が微かに温かくなり、世界が少しずつ歪み始めていることに、まだ気付いていなかった。
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