第31話「新学年序盤のランク測定」

 最上級学年の始業後、学院では年始めの恒例行事として「ランク測定」が実施されることになった。これまでは不定期だったが、この最終年度では特別に正確な魔力・身体能力・戦闘技術の総合評価を出すため、厳密な儀式が行われるらしい。


 朝、学内の広いホールに全員が集められ、測定器と魔力感知水晶が並んでいる。Lクラスの生徒やMクラスが数名、N級以上も多数いて、皆が自分の成長を確かめようと目を光らせている。特に、総合戦術大試験で上位に食い込んだ者たちは、この測定を機に正式なランク認定を得るかもしれないと期待しているようだ。


 ワシはリールと視線を交わす。「この前の大試験で準優勝したからな。ワシのランクが上がるかもしれんって噂を聞いたけど、実際どうなるかな。」

 リールは笑顔で「大丈夫よ、あんなL級相手に引き分けまで持ち込んだあんたがN級のままなんてあり得ないわ。M級に上がる可能性は高いんじゃない?」と励ます。


 測定は、魔力測定器と身体能力評価装置、戦闘シミュレーションを組み合わせて総合スコアを算出する方式だ。1人ずつ壇上に呼ばれ、順番に計測されていく。N級者やN近い生徒が次々結果を告げられ、合格水準を超えた者にはM級相当と判定されることもあるが、そう簡単にM級へ昇格する者は少ないようだ。


 リールが先に呼ばれた。彼女は大試験で上位に進んだ実績があり、光魔法の制御能力や機動力で評価を上げていた。壇上で静かに魔力を呼吸法に合わせて循環させ、装置が青白い光を放つと、測定員が「N上位クラス、M級相当にはまだわずかに届かず。ただし成長度から見てMに近いレベル」と告げる。

 リールは軽く肩をすくめ、笑って戻ってくる。「あと一歩でM級相当だってさ。まあ、この一年で確実に上がるでしょ。」

 ワシは頷く。「さすがだな、リール。お前もすぐM級まで行けるだろうな。」


 続いて、ついにワシの名が呼ばれる。会場の視線が集中し、少し緊張するが、今さら怯む必要はない。壇上で魔力を安定させ、戦闘シミュレーション装置に向き合う。

 指示に従い、M級相当の模擬魔物が投影される幻影空間で、短時間のデモンストレーション戦闘を行う。ワシは光や音を使えない状況で、代わりに動きの精度と瞬時の判断で魔物の弱点を突く。短剣を一閃、模擬敵を一撃で沈めると、周囲から感嘆の声が漏れる。


 さらに魔力測定器に手をかざすと、青白い光が一気に強まり、測定員が目を見張る。「これは…かなりの成長だ。前回の測定値を大きく上回り、M級相当どころかMの中でも上位、Lに近いレベルに迫っている。」

 その言葉に会場がどよめく。L級に近いなんて、昨年までは想像できなかったが、あの死闘と日々の訓練がワシをここまで引き上げたのだろう。


 測定員が「バル・バルフォール、正式にMランク相当と判定します。」と宣言する。周囲が一斉に拍手し、リールが満面の笑みで手を振っているのが視界の端に入る。

 ワシは胸の奥が熱くなる。これでM級か。N級からスタートし、L級戦士と互角に渡り合う一瞬を作り出してMに達した。今はまだMの中でもLに近いと評価される段階だが、卒業までの一年で、ここからK級相当へたどり着く青写真がさらに鮮明になる。


 壇上を降りたワシに、ガルスが駆け寄ってくる。「お前、すげえな! M級認定とか、卒業前にそこまで行く奴なんて聞いたことねえぞ。」

 ワシは照れながら「ありがと。これからさらに頑張るさ。K級目指すって話、嘘じゃないからな。」と応える。


 リールもやってきて、「おめでとう、M級相当なんて。あんたがどれだけ先を見てるか、あたしも負けてられないわ。次はあたしもM級まで上がって、並んでLに挑めるくらいまで行く。」

 ワシは微笑んで「楽しみにしてる。あんたと競い合えば、K級まで行くのも早いかもしれない。」と言うと、リールは頬をわずかに赤らめるが、そのまま笑顔を崩さない。


 午後、学院の練習場ではM級相当になったワシに対して、特別な訓練メニューが提供されるようだ。M級魔物を模した実戦訓練や、L級に近い領域を意識した魔力制御課題が増えるらしい。

 「今までN級からM級へ到達するまで、ずいぶん試行錯誤したけど、やっと一段階目標を達成したな。」心中で噛みしめる。卒業まで1年、K級相当へ至るにはM級を安定化し、さらに技巧を伸ばしていかなくてはならない。


 夕方、リールと校庭を歩きながら、今後の計画を語り合う。M級相当となったワシは、今後の学内大会や特別試験でさらなる優位に立てるはず。L級に近いレベルと評されたなら、L級戦士への再挑戦も夢ではないだろう。

 「この一年でK級に迫るって、本当にすごい計画だけど、あんたならやれる気がする。」リールが力強く言う。

 ワシは静かに頷く。「ああ、やるよ。M級になったから満足するわけにはいかない。この学院で得られる経験を全て吸収して、卒業時にはK級近くまで行く。」


 夜、寮でノートに今日の記録をまとめる。Mランク相当への昇格、L級に近い評価、周囲の祝福と期待。

 「ここからが本当の勝負だ。」心中で決意する。M級は通過点、K級相当までの道は険しいが、1年もあれば十分な地固めが可能だ。

 明日も特別訓練が始まり、学内イベントや試合があるだろう。M級相当の力を活かし、知略をさらに磨けば、K級への階段は確実に見えてくる。

 そう考えながら瞼を閉じる。先への期待と新たな力、そしてリールや仲間たちとの挑戦が、明日からもワシを前へと突き動かす。




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