第15話「中級クエスト正式決定―N級2人タッグの有効性」
数日後、アマル先生から正式発表があった。「近隣商隊からの護送依頼が決まったわ。中級クエスト扱いで、学院からN級者を2人派遣する予定。バルフォール、リール、あなたたちに打診が来ているわよ。」
リールと共に話を聞くワシは、当然承諾する。まだ学生だが、N級に到達した者が中級クエストで経験を積むことは、学院が推奨し始めた新制度らしい。Mクラスの魔物が出没するルートを商隊が通るので、N級2人なら対応可能と判断したそうだ。
「N級2人いればMクラス魔物も押し返せる。あんたとオレなら問題ないだろ。」ワシがそう言うと、リールは少し照れながら「そうね、あたしたち2人…悪くない組み合わせかも。」と頬を染める。
ガルスや先輩は今回は別任務らしい。ガルスは別の中級クエスト候補に選ばれそうで、レイアン先輩も上級生として他の若手を引率するプランがあるとか。つまり、今回はワシとリールの2人タッグとなる。
リールは意外なほど喜んでいるように見える。「あんたと2人で現場に出るなんて、なんか不思議な感じね。前はライバル心むき出しだったのに…」
ワシは笑う。「ライバルであることに変わりはないが、こういう場面では協力して強さを発揮すればいい。Mクラス魔物はN2人で対処可能なんだ、2人で互いの力を引き出せば苦戦しないはずだ。」
Mクラス魔物はN1人では荷が重いが、N2人いればフォローし合い、隙を作って撃破できる。例えばMクラスの中型獣が現れたら、ワシが囮になって動きを引きつけ、リールが後方から魔法で弱点を突く戦法が考えられる。
リールは魔力制御で照明や幻惑効果も作れる。明暗や地形を活かし、Mクラス魔物の感覚を狂わせれば、ワシが簡単に急所を狙える。逆にワシが制御できない範囲攻撃をリールがカバーする形も有効だ。
放課後、リールと一緒に練習場へ。2人で即興コンビネーションを試してみる。ワシが前に出て木製モンスター人形を引きつけ、リールが上から魔力弾で叩く。慣れない動きにリールが戸惑い、「ちょ、もう少しゆっくり引きつけて!」と苦笑する。
「悪い悪い。でもこれでわかった、少し間を作ってから誘導したほうがいいな。あんたの魔法が当てやすくなる。」
リールは「うん、助かるわ。あ、あたしも光の強さを調節するから、あんたも敵の動きに合わせてステップを変えてよ。」
こうして何度か試行錯誤し、2人の呼吸が合ってくる。普段なら冷静に対応するワシも、彼女が近くにいると妙に意識してしまうが、そこはプロ意識で押し通す。リールも緊張と照れを隠しながら技術面に集中。
「いい感じじゃないか、リール。」
「そ、そうね、あんたとならやれる気がしてきたわ。」彼女は小さく微笑む。いつもクールだったリールの柔らかい笑顔が新鮮だ。
夜、寮でノートを広げる。今回の中級クエストは商隊護衛、一度外に出れば本番さながらの現場だ。Mクラス魔物が出ればN2人で対処可能…だが油断すれば痛手を負うかもしれない。戦い方を再確認し、安全対策を念入りに計画する。
(卒業後にはもっと強烈な魔物や難度の高いクエストも待ち構えているだろう。今はまだ準備期間。N級の枠内で経験を積み、実践で鍛え上げるべき時期だ、と頭で理解しながら先へ進む。)
リールへの想いをどうするか?まだ考えない。今は目の前の任務成功が優先だ。彼女との相性は悪くないし、共闘の中で互いの存在を意識し合うなら、それが強さの源にもなるだろう。
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