第5話 実習決行! 弱者パーティの下克上

 ついに実習当日。2年生全員が錬章院裏手の森へ集まる。覇刀連の下級構成員が監視役として立っており、教師たちも見守っている。ワシらの任務は「小型ワイバーンを一体仕留め、その牙や鱗を持ち帰ること」。時間制限内に成果が出せれば高評価だ。


 才能者チームはリールやガルスを中心に、自信満々の様子。「ま、余裕でクリアできるだろう」と高笑いしている。周囲も「やっぱあいつらは別格だよな」と囁いている。だが、ワシら凡人パーティは誰も注目してない。むしろ「なんでバルはそんな連中と組んでんだ?」とか「勝てるわけないのに必死だな」なんて揶揄している。


 いいさ、笑ってろ。結果で黙らせる。


 「行くぞ、みんな。」ワシはパーティメンバーに声をかける。マイロは緊張で汗びっしょりだが、頷いて鈴を握る。ジェドは足踏みして心を落ち着かせ、ナーナは魔力行使の準備を確認。全員がワシの指示を待っている。


 森に入ると、鬱蒼とした木々の中で小動物の鳴き声が響く。ワシは慎重に進む。前世で痛い目を見たからこそ、ここでの地形や雰囲気は懐かしい。少し歩くと、奥の方で聞き覚えのある甲高い声。ワイバーンがいるな。


 木々の間から覗くと、身長ほどの小型ワイバーンが翼を広げ、鋭い牙をむき出しにしている。近づきすぎれば危ないが、ワシたちには作戦がある。


 「マイロ、鈴を軽く鳴らせ。絶対に慌てるな。」

 マイロは震えながらチリンチリンと鈴を鳴らす。ワイバーンが「キィッ?」と首を傾げるようにこちらに注目した。いい感じだ。


 「ジェド、右側から回れ。足音を殺して背後へ行け。」

 ジェドは足音を消し、慎重に回り込む。ワイバーンは鈴の音に集中しているから、気づきにくいはずだ。


 「ナーナ、光魔法の準備。合図したら即発動だ。」

 ナーナは小声で「うん、わかった」と頷く。練習通りにやれれば問題ない。


 ワイバーンが鈴に引き寄せられ、マイロから数メートルの位置で動きを止める。今がチャンスだ。


 「ナーナ、今だ!」

 ナーナが短い詠唱で光を放つ。閃光がワイバーンの顔面で炸裂し、やつが目を細めて声にならないうめきを漏らす。その一瞬、ジェドが背後から脚部を短剣で切りつける。ワイバーンが悲鳴を上げ、バランスを崩す。


 「ここで決める、ワシがトドメだ!」

 ワシは一気に懐に飛び込み、短剣を足元の急所へ突き立てる。前世で知らなかった急所も、今はわかってる。力を込めて一刺し。ワイバーンは激しく痙攣して、息絶えた。やった、練習通りだ!


 「や、やったぞ!」

 マイロが歓喜に震える。ナーナは泣きそうな顔で「成功…本当にできた!」と喜ぶ。ジェドは「すげえ、計画どおりに倒せた!」と息を切らしている。


 ワシは汗を拭い、牙を回収。「撤収だ、これで任務達成。最初に戻ったら目立てるぜ。」


 パーティで森を出て、戻ってくると、教師たちと覇刀連の監視員が目を丸くする。「もう戻ったのか? そんなに早く?」

 ワシは得意げに牙を見せる。「これが証拠です。」


 周りの生徒がざわつく。「嘘だろ、あのバルと弱そうな連中がもうワイバーン討伐!?」

 ガルスとリールが帰ってくる頃、ワシらは既に任務完了済み。ガルスは「はあ? どうやったんだよ」と唖然し、リールは「面白いじゃない、まさか先にやられるとはね」とニヤリ。


 アマル先生は目を輝かせ、「バルフォール、すごいわね。きちんと計画を立て、仲間を指導して成功させたんだ。」と褒めてくれる。ワシらの凡人パーティが先行クリアした事実は確実に評価される。才能がなくても知恵を使えば勝てるってことだ。


 メンバーは涙ぐむほど喜んでいる。「バル、ありがとう! お前がいなかったら絶対無理だった。」

 ワシは肩をすくめる。「別に大したことじゃねえよ。みんなが頑張ったから上手くいったんだ。ワシはただ、効率考えただけだ。」


 周囲の生徒も「バルってあんなに頼りになる奴だったのか」と感心してる。さっき笑ってた奴らも黙ってる。いい気分だな、やり直し人生最高だ。


 こうしてワシは、在学中の最初の大勝負で結果を出した。才能者にはまだ敵わないかもしれないが、凡人チームで先行クリアは大きな一歩だ。これで評価が上がり、次の目標であるランク上げもしやすくなるだろう。


 「二度目の青春、ここからが本番だ。ワシの底力、見たか? このまま駆け上がってやる!」


 誇らしげに胸を張りながら、ワシは心の中で吠える。まだ始まったばかりだが、もう負ける気がしない。


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