クリスマスをぶっこわせ!

ただのネコ

第1話 12月24日 洋菓子店ボヌール前にて①


We crush your テメェらのクリスmerry Christmas.マスをぶっこわす

 We crush your テメェらのクリスmerry Christmas.マスをぶっこわす

 We crush your テメェらのクリスmerry Christmas.マスをぶっこわす

 And fxxking ついでにクソったnew year!れな新年もだ!


 伸びの良いテノールは、むなしく夜空にこだました。

 歌い手の若々しい顔立ちを眺め、ため息を一つついてから翔太しょうたは一言指摘する。


三吉みよしくん、さっきから替え歌歌ってるよね」

「あ、わかります、副店長?」


 白く長いつけひげをもごもごさせて、三吉と呼ばれた青年が笑う。

赤いもっこもこの服に、天辺に白いボンボン付きの三角帽、そして白く長いつけひげ。誰がどう見てもサンタクロース……の仮装をしてケーキを売るバイトだ。

 ついでに言うと、翔太自身はトナカイのかぶり物をしている。

 ここは洋菓子店ボヌールの店の前。2人の前には机があって、白い箱が10個ほど積んである。中に入っているのは、もちろんクリスマスケーキだ。


「いいじゃないですか。俺はイブにケーキ売る以外の予定がないクリぼっちなんですから」


 店は駅前というには少し離れてしまっているので歩く人はかなり少ない。

 ちょっと不謹慎な替え歌を歌っていても、たぶん誰も気づきやしない、と言いたいのだろう。


「しっと団乙」

「なんすかそれ」


 翔太より一回り年が違う三吉は、当然読んできた漫画も違う。ジェネレーションギャップを感じつつ、ざっくり解説。


「昔の漫画にそういうのが居たんだ。クリスマスとかバレンタインとかにカップルを爆破する奴ら」

「じゃあ、副店長は気をつけなきゃですね。この後デートでしょ?」


 胃の痛そうな表情を作って、翔太は肩をすくめた。


「先週別れたところさ。若くてかわいい子とお幸せに、とか訳の分からんラインが来てね」

「えーと、それは、その、すみません」

「いや、三吉くんに謝ってもらうことじゃないから。仕方ないよ」


 実のところ、翔太としてはそれほど気にしてはいなかった。元々、彼女との間に愛など無かったのだから。

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