第26話

森本もりもとがこれまでの調査で得た情報を説明し終えると、谷口たにぐちはゆっくり頷く。

「なるほど。確かに怪しい点が満載だ。君が写メで送ってくれた石も、トリニタイトの可能性がある。アメリカの国立博物館で見たトリニタイトと、非常に似ている。仮に核実験であるなら、許しがたい行為だ。唯一の被爆国である日本で、このような事が行われているのだからな」

谷口は掛けていた眼鏡を外し、顔を真っ赤にした。

「ええ。本当にその通りだと思います。それで、谷口さんに確認したいのですが、核実験を証明するには、やはり核実験場を特定するしかないのでしょうか?地表で放射線の影響を調べるのは、困難ですか?」

森本が谷口にたずねる。

「いや、もし地下の核実験場であったとしても、何かしら地上に影響は出るはずだ。今回、君たちが調査している山鳴りもそうだ。他にも木々や小動物など、自然からの何かしらのサインがあるはずだ。それに、トリニタイトが地上で見つかったという事は、放射性廃棄物などを地上にてている可能性がある。そうなれば、微弱な残留放射線の痕跡が、地面で見られるかもしれない」

谷口の言葉に、はたけ伊織いおりが困惑する。

「えっ?では寂地山じゃくちさんで調査をしている私たちも危険なのでしょうか?」

畑伊織の心配を察してか、谷口は表情を和らげた。

「心配はいらない。仮に残留放射線があったとしても、僅かなものだろう。長時間、その場所に留まらなければ、一回、レントゲンを撮るくらいか、それより低い被爆量にしかならないよ」

「そうですか」

畑伊織は安堵した表情になる。

「谷口さん、放射線測定器ガイガーカウンターお借り出来ませんか?それで調べてみたいんです」

森本が言うと、谷口は大きく頷いた。

「分かった。明日までに準備をしておこう。また明日の10時に、このファミレスに来てくれ」


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