第25話

国道2号線を走るJeepの車内には、漆黒の空模様に似た重たい空気が充満していた。

森本もりもとはたけ伊織いおりは、それぞれが深く思案をしているようだ。

これから起こりうるであろう、想定外の事態にどうやって対処すべきかを。

寂地山じゃくちさんで発生した山鳴りの現地調査が、まさかこのような状況になるとは二人とも思ってはいなかった。

さすがに連日の現地調査と映像確認で、二人の顔には疲労感も滲み出ている。

「あった。あそこだ。あのファミレスで落ち合う約束になっている」

沈黙を破り、森本が話し出す。

「多分、彼はもう到着しているはずだ。どこで誰に聞かれるか分からないから、あまり長居はしないようにしよう」

「そうですね。私たちもどこかで監視されているかもしれませんし」

二人は車を降りると、店内へ足を運ぶ。

森本が一番奥の席へと目を向けると、一人の男性が軽く手を挙げる。

二人が席に近づくと、男性は畑伊織の方を見て怪訝な表情を浮かべた。

その視線に気づいた森本が、紹介を始める。

谷口たにぐちさん、お久しぶり。彼女は親友のお子さんなんだ。今回、彼女と一緒に調査をしているんだ」

「はじめまして。畑伊織です。今回、森本先生に同行して調査をご一緒させていただいてます」

畑伊織が話すと、谷口は驚いたようだ。

「まさか助手がいるとは思わなかった。いつも森本は、絶対単独行動していると思っていたからね」

そう言うと谷口は立ち上がった。

「はじめまして、畑さん。私は谷口正司しょうじと申します。もしかして防衛大学校に勤めている、幸一郎こういちろうさんの娘さんかな?」

「はい。そうです」

「やっぱりか。なんとなく雰囲気が似てると思ったんだ。まあ、とりあえず席に座ってくれ。詳しい話を聞かせてほしい。私が、どこまでアドバイス出来るかは分からないが」


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