第10話 最後の冬
ティアを狙って、魔物が襲ってきたが、俺は必死に撃退した。
「竜だったのか?」ティオスは驚いていた。
ドラゴンがある程度、成長すると悠々と空を飛び、自分で餌を捕まえるようになった。
ダンジョンも、やっと攻略が完了した。その中で、小屋の先人であった、上級魔術師の亡骸を見つけ葬った。
彼の近くで、魔石を見つけた。二年ぶりに、俺は、街に出かけた。
街は、更に、騒々しさが増していた。
「大陸の覇者の国になっても変わらない。むしろ、酷くなった」
「国王が亡くなってから、食えなくなったぞ。我慢ならねぇ。国王毒殺だって噂だぜ」
聞き耳をたてる必要もないくらいの大声の会話が聞こえてくる。だが、浮浪者も孤児も道にいない。
エルダの店を訪れて、魔石を渡した。
「あんた、やるねぇ。他に依頼したいことがあるんだが」
「受けない」俺はきっぱりと断った。
ティオスが、食事をして行こうと、いつもの酒屋に入った。
「第一王女を政略結婚させ、レイラ王女が国王になるらしい。酷い女だ」
「帰ってきた第二王子は、投獄されたらしい。まさか、この地に送られるのか」
ここでも、我慢ならない話が聞こえてくる。ティオスが、申し訳なさそうな声で話し出した。
「十八の誕生日のプレゼントは、ここで奢りで許してくれ」
「何だ、そんな事か。いつもありがとう」
「女はどうする?」
「いらん」
「じゃあ、酒だ」
「そうだな。飲みたい気分だ」
ティオスと朝まで飲んで別れた。老人が酔い潰れるのは珍しい。だが、この男は口が硬い。
早朝の寒さの中、息を吐くと白く、空には、俺を迎えにきたハルカの姿があった。
最後の冬を迎えた。
魔女には、いつものように魔力を吸い取られたが、魔力が増えていたので、問題がなかった。
「……お前、私と契約しろ……」
「悪い。俺にはやることがある。だが、ここにいるときはいつでもやる」
戦闘も覚悟したが、魔女は俺の手を取り、微笑んだ。今回の報酬は、見えざるものを指し示した。
「……人も魔物も操る悪魔が生まれている……」
俺は、やっと、全てを理解した。信じていたことは、間違っていなかった。
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