呪縛霊子さんは幸福屋である

紫時雨

第1話 カレイドハート 

呪縛霊子は幸福屋である。

幸福屋とは、幸せを前借りできるが…借りた幸せの倍の不幸が貴方に訪れる…

幸せを買わずに生きていく…そんな事さえ出来ない、死を受け入れた子どもの元を行く

次犠牲になるのは、この物語を読んだ貴方かもしれない…

これは呪縛霊子が初めて幸福屋としての仕事を全うした話しである、一度幸福を奪ってしまったら、もう後戻りは出来ない…


令和6年2024年11月○日某県


私の名前は龍田時雨、どこにでもいる中学生さ

そんな私だけど最近少し悩みがある…それは

「時雨~あんたまたテストで赤点取ったのね、お母さん言ったよね?次テストで赤点取ったら半年間ゲーム無しって」

「ちょっと待ってそれだけは勘弁して~」

そう、私の悩みはテストの点数が上がらない事だ最近やっと中学生になって念願のスマホを手に入れたと思ったら、1日3時間だけだなんて…お母さんは私を殺す気か!?信じられないよ!最近の中学生の癒しはスマホとゲームなのよ!全くお母さんとはどうやら分かりあう事は不可能らしい

毎日毎日よくそんなに私の為?に怒れるね、別に私は頼んだ覚えは無いんだけどね、お母さんだって怒りたくて怒ってる訳じゃないのよ!とか言ってるけど…じゃあ怒らないでよ、私だって怒られたくて怒れてないよ

「聞いてるの!?今回は見逃すけど次は無いからね!!」

私は取り敢えず、反省してる風に言った

「分かったよ…次は期待に応えてみせるよ」

お母さんは渋々部屋を出たみたいだ…やったぜ!

「さぁてゲーム三昧だね!誰も私を止められないよ!あっはっはー」

次のテストは2週間後にあるんだけど…まぁなんとかなるでしょっ!

こうやって何度も何度もテスト勉強する時間も環境もあるのに絶対に私は勉強しなかった、したくなかったんだ、だって面倒だもの

こうして私はぐうたらに時間を過ごし、テストは残り4日を切った、この時私は気がつかなかった…着実と私への不幸の片道切符は配られた…という事に

「不味ね、そろそろ勉強しないと……」

朝起きて私はすぐに焦り出した、今回のテストで赤点を回避しなければ…!私は死んでしまう!スマホとゲームを没収されるなんて死んでも妨害してやるんだ!


学校にて

私はイツメンである、真理亜と遥香と一緒にしゃべっていた、二人は成績優秀で私とは比べものにならない、真理亜に至っては前のテストは学年一位であった

「真理亜…今回のテストは…負けないよ」

おとなしい遥香は控え気味に言った、そんなに悔しがること無いのに遥香だって2位じゃあないか…私がもし2位なんて取ったら親は泣いて喜ぶだろうに…肝心の私は100位ぴったりさ★でも最大の人数が200以上居るんだろって?残念そう思ったそこのキミ残念だったね、100人しかこの学年はいないよ、私を含めてね

「真理亜に勝てるかな?あははー」

ウゼー、これが一位の余裕ってやつか?羨ましいー私にもその頭の良さを半分…いや、6分の1でいいからくれよ~

「時雨は…いい加減…勉強したらどう?私達で良ければ…教えるよ?」

ありがたいお言葉だっ!でもさすがに遥香に迷惑はかけられない、提出物だってほぼ全部写させて貰ってるからね、一人でやるよ

「いや~それは、ありがたいんだけどさぁ、遥香にはお世話になりっぱなしだからね、私一人でまず頑張ってみるよ、それで悪かったら…頼るね」

「分かった…応援してる…」

少し悲しそうにしないでおくれよ、これじゃ私が悪者みたいじゃん!

「なんだ?なんだ?龍田か、言ってる事が酷すぎて、コオロギが鳴いてるのかと思ったよ」

「げっ!達也かよ…」

「げっ!とはなんだ、人が折角来てやったっていうのにこの女は…信じられないぞ」

この男の名前は秋山達也、純度120%のナルシストだ、昔彼女がいたらしいがどうやったらこんな男を好きになれるのだろうか、ちなみに私は彼氏出来た事無い歴=年齢だ!…私はこいつに劣るのかよ…

「茶化しに来たのなら帰ってよ、生憎あんたの席はないよ」

すっかり真理亜も遥香も黙り込んでしまったので私が言った

「まあまあ、そんなにカッカすんなって、俺は面白い話を持って来てやったんだ、感謝して欲しいぐらいさ」

今までずっと黙り込んでいた真理亜が大きな声で言った

「あっ!それってもしかして…"幸福屋"のこと?

有名だよね、それ」

幸福屋?なんだそれ…殺し屋の逆バージョンとかか?それともなんかのアイドルの名前か?だとしたら絶対に流行らないと思うけどなぁ、アイドルか…そういえば小学生の頃アイドルに憧れてたな懐かしい、グループ名を考えて真理亜と遊んでたな…確か"カレイドハート"だったっけ?、この話は止めよう、生憎私は懐古厨じゃあ無いんでね

「確か、幸せを前借りできるんだったよね?」

「その通り!幸せを前借りできるんだよ、それと知り合いから幸せを奪えるらしいな!でもそいつに2倍で幸せを支払わなければならないらしいな」

「でも……幸せって……どうやって…返すの?」

「さぁ、分からないんだ、時雨知ってるか?」

いきなり話を振るなよ

「知らないよ…」

でもどうやって幸せを借りた2倍返すんだろう、私の頭の85%はこれに埋め尽くされたよ…これじゃ集中して勉強出来ないー困った困った

「お前ら、絶対に幸福屋には頼るなよな、あれに関わった人はみんな行方不明になっちまうんだ」

「うまい話には…裏がある」

遥香がこの世の終わりの様な声で言った

「…そうだな、俺は自分の席戻るわ」

「早く帰りな、しっしっ」

特に何も面白い事も起きず、気付けばもう放課後だ、私は一緒に帰ろうと思い真理亜と遥香を誘った、そこで遥香がとても面白い事を言ったんだ!

「私ね…実は…好きな人が…居るの」

真理亜は遥香をからかいたいのか遥香に沢山質問した

「えぇ!誰々!?めっちゃ気になるんだけど~特徴教えてよ!ね?良いでしょ良いでしょ?!お願い~」

遥香は困った様な顔をして言った

「ちょ、ちょっと…内緒…だよ…だよ」

真理亜は残念そうに言った

「えぇ!気になるんだけど、時雨も気になるよね!?よね!?」

確かに気にならないといえば嘘になるが…第一遥香が困って居るんだ、助け船を出してやるか

「まあまあ、落ち着きなよ真理亜、遥香だって困っているだろ?」

「そうだね、ごめんねぇ」

「いいよ…友達だから…ね」

友達か…いい響きだね、出来れば私達3人はずっと大人になってもなかよしでいたいね

当時の私達はあんな惨劇が起こるなんて微塵にも思っていなかった、そう霊子がやってくるまでは


次の日

朝、私はいつも通り起きていつも通り学校の支度をした、

学校に行く途中、真理亜と会ったので一緒に登校する事になった

真理亜がいきなり私に話かけてきた

「ねぇ時雨、やっぱり気にならない?遥香の好きな人、私気になり過ぎて昨日寝てないよ」

いや、寝ろよとツッコミたいが、私は機嫌がいいんだ、許してやろうぞ

「気になるけど…私はやっぱり触れてあげない方がいいと思うんだ、アイツの為にも、私達の為にも」

この時、私は気がつかなかったが、運命の歯車は回り始めていたんだ、そして、あんな惨劇に繋がるなんて思いもしなかった

「やっぱり…あんたは遥香に味方するんだ!私なんかどうでもいいんだ!じゃないとおかしいよ、普通じゃない!!時雨…あんた、おかしくなっちまったんだ!そうだ…そうに違いない」

は?こいつは何を言っているんだ?私がおかしい?おかしいのは、あんただよ!

「ま、真理亜落ち着きなよ…みんな見てるだろ」

気付けば私達は、ご近所さんたちに見られていた

ヒソヒソ話を始める人も居れば、面白がる人もいた、つまりバカにされているって事だ

「ご、ごめんなさい!真理亜のせいで、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

なんだ!?どうしたっていうんだ、昨日何があった?確か…幸福屋について話していて…幸福屋?それのせいなのか?にしては狂い過ぎだ

取り敢えず、こいつをなんとかしないと、私が悪者扱いされる…

「落ち着いて!私はとっくに真理亜を赦してるからさ!お願いだから、謝るのを止めてくれ!気が狂いそうだ!!」

「ひっ!わ、分かったから、その眼、止めてよ、怖いよ」

なんだこいつは?昨日まで最高の友達だと思っていたのに、一度そういう目で見てしまったらもうそういう風にしか思えないよ

私達は教室に向かった、教室は真理亜の態度とは真逆で、落ち着きのある、暖かいクラスだ、やはりこうでなくては

「よう、遅かったな」

「げっ!達也かよ」

「お前…まぁいい、俺は今機嫌がいいんだ」

ずっと機嫌良いじゃないか

「なんせ、今日転校生がくるんだ、噂によると超が付く程の美人さんらしい!!お前とは違ってな」

私は無言で達也の足を踏んだ 

「いだだっ何しやがる!」

転校生か、タイミング悪くね?だって今11月だよ?すぐに新学年じゃん、残りの日位地元で過ごせば良いのに、

チャイムがなり、私達は席へと座った、間も無くして転校生がやってきた、一言で言うとそれは超が付く程美人さんだった、黒いショートヘアに

日本人とは思えない位キレイな紅の色をした瞳、ついつい見とれてしまったよ…

「じゃあ、自己紹介してくれ」

先生如きが何偉そうにしてやがる

「はい、呪縛霊子です、宜しく」

何故か分からないが脳に稲妻が走った、本能がこいつに関わるな…って言って止まない、手汗と身体中から変な汗が止まらない…こんなの生まれて始めてだ、しかもよりによって、席が私の後ろだった、彼女が席に座った瞬間耳元で囁かれた

「これから、宜しくね」

「あ、ぁ宜しく」

何故か分からないが、嫌な予感がする、何か大きな事件が起こる気がする…気のせいか…気のせいにしよう!そう!そうしよう、いや、そう思いたかった

テストは…もう無理か、どう言い訳考えるかな~いっその事大きな事件…殺人事件でもこの学校で起きてくれたら勉強する時間を確保できるんだけどね~

特になんて事もなく気付けばもう放課後だった

いつも通り、真理亜と遥香を一緒に帰ろうと誘ったが…

「ごめんね、今日真理亜、用事があるから、先帰るね」

すっかり元に戻って安心したよ、またあんな風に叫ばれても、鬱陶しいだけさ

「じゃあね!」

真理亜はさっさと帰ってしまった

「じゃあ私達も帰ろうか」

「そうだね…行こうか」

「………………」

「………………」

気まずい!話しのネタがないから、下手に喋れない、いつもは真理亜がいるから話題に困らなかったんだけど

「ねぇ」

来たーまさか遥香から来てくれるとは、助かったぜ~

「うん?どうしたの」

「時雨は…私と…真理亜どっちが…大事なの?」

へ?急にそんな事言われましても…安定択とるか

「そりゃ、両方大事に決まっ…」

「黙れっ!!どうして私じゃないの?」

怖いよ、そんな風に怒らないでくれよ!

「どうしてって、私達3人はずっと仲良しだったじゃんか…それなのに、どっちかなんて…決められないよ!私はどっちも自分の命ぐらい大事だよ!」

私はありったけの思いをぶつけた、まさかこんな時期に、自分の思いをぶつけるなんて…まるで私がアイツみたいだ…

「そうだね…私達はずっと3人で頑張って来たもんね、この話は忘れて、私こっちだから…バイバイ~」

「あぁまた明日ね」

妙に怖かったが、"アイツ"のせいだろうか

「あれ?」

前を見ると、真理亜と霊子さんがいた、なにやら真理亜が熱心に話しているが、内容が全く聞こえなかった、私はすぐに覗き見を止めて家に帰った

なんだか良くない気がしたからね


次の日

朝、私はいつも通り…とはならず、いきなりインターホンが鳴った、誰かと思い見て見ると、真理亜だったが、怖い位の笑みを浮かべていた

「ちょっと待ってくれ、今起きたばっかりでね」

「いいよ…真理亜は今ね最高の気分だから…」

お前は達也かよ

急いだので10分で用意し、玄関を出た

「お待たせ、行こうか」

「そうだね」

「昨日、何かあったの?やけに嬉しそうだからさ」

「特に何も無いよ~」

「そうなんだ…」

「所で話が変わるんだけどさ、大事なものを守る為にはどうすればいいと思う?」

訳が分からない、どういう意味だ?

「それってどういう…」

真理亜は途端にゴミを見る様な目をし、冷徹に言った 

「早く、答えてよ!」

「早く早く早く早く早く」

こいつ…何を言っているんだ?悪魔と契約とかか?…笑えないね

「一体どうしたんだ?笑えないよ…もしかして幸福屋と契約でもしたのかい?」

出来ればこれは当たって欲しくなかった、だけど現実は甘くないんだ、激辛さ…

「そう、当たり、私は幸福屋と…呪縛霊子と契約したわ、幸せの力は凄いのよ?私何でも出来る気がするの」

そんな!真理亜が幸福屋に騙されるなんて…きっとこれは悪い夢に決まってるよ、そうだ、そうに違いない!!でも、幸せの代償を払う時真理亜は…何故だろう、あんなにも忌まわしく思っていた真理亜がとても大事に思えてきた、もしかしてこれが、幸福屋の力なのかな?私に…私には何が出来るんだろうか?

「私には時間が無いの…"支払い"が残っているからね」

嫌な予感がした…真理亜が幸せを支払う事が出来ず幸福屋に行方不明にされてしまうんじゃないかって、それが怖くて堪らなかった

「じゃあね、遥香に自慢してくるわ」

駄目だ!今ここで真理亜を行かせてしまえば、きっと取り返しのつかない、惨劇が引き起こるに決まってる!何でもいい!声を!声を出させてくれ!

「ぁ……あ」

そんな…私は何もできなかった、運命に抗えず、ただ運命に翻弄されるがままだった、もう真理亜は救えない…私の敗けだ

いや、まだ希望がある、それは私も幸福屋と契約すればいいんだ!

私は学校へ走った、そしてアイツに会いにいった

「見つけたよ…呪縛霊子!」

ソイツは驚いた様な様子で言った

「朝からなに?!びっくりするじゃない」

「あんた幸福屋なんだってね、私と契約してくれ!」

ソイツはニヤリと笑い私に尋ねた

「どうい風の吹き回しかしら?まぁいいわどっちのタイプで行く?」

勿論答えは、決まっていた

「私は"奪う"を選ぶよ、相手は真理亜だ…」

「分かった、それじゃ契約成立ね」

気が付くとアイツはいなかったが、関係無い、これで真理亜を救えるのだから…

私は真理亜を探した、私のオカゲで救われている所を見届けてやらなくては、真理亜が不憫だ

見つけた!真理亜だ、なにやらこの世の終わりの様な顔だ、実に酷いね

「どうしたんだ?そんな顔して笑えない状況なのかな?」

「どうした?じゃないわよ!私は後もう少しで死ぬのよ!!」

何を言っているんだ?この女は?私が命をかけて救ってやったんだぞ?感謝の一言も無しに死なせてたまるか!

「どうして、そう思うんだ?!私がお前の幸せを奪ったからこれですぐに不幸として返せるだろ?」

「むしろ逆よ、あんたが私の幸福を奪ったから…あんたのせいで私は死へと近づいたわ!、もう息が肩にかかってくる位近いんだよ!それと支払いは不幸じゃない!!それは幸福屋が効率よく魂を集める為の嘘よ!正しくは、幸福を使い切った後に、嬉し涙が出る位の幸せな出来事が起きれば、私は呪いから解放されるのよ!」

なっ…私は言葉が出て来なかった

「とにかく私はもう不幸な出来事に遭遇したら…死ぬのよ…あんたのせいでね!」

「死ぬなんて言うなよ!まだ死んじゃ駄目だ!遥香の好きな人だって聞いて無いだろ!」

「あ、それは…」

「真理亜」

突然、達也の声がした、振り返ったら達也と一緒に遥香が隣にいた

「真理亜…お前に伝えなければならない事があるんだ…聞いてくれ」

「嫌だ!嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!聞きたくない!!」

「俺は、お前と付き合えない…俺は遥香が好きなんだ!」

「嫌だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!私は不滅なんだ、最強の真理亜様だぞ?!死なんてあり得ないのよ!」

「ブラボーブラボー、よくもこんなにも不幸を集めてくれたね、もう手遅れよ~」

「私は…どうなるの!?」

「残念だけど"デリート"よ死んで貰うわ」

どうせ嘘だ、人がそんな簡単に死ぬ訳が無いよ

「死にたく…グハッ…アガッ…」

嘘だろ?真理亜が脳天ぶち抜かれて死んだ?

おかしい、私が救った筈だろう?!じゃあ私は何の為に契約したんだ?誰か教えてくれよ!!取り返しのつかない間違いを犯した私は死という運命から抗えずにそのまま死ぬのか?

「時雨…私ね、ずっと秋山さんが好きだったの」

「う、うん」

「でもね、私達の恋路を邪魔する悪い子がいるの」

話の意図が読めない、遥香は私に何が言いたいんだ?!

「だからね、秋山さんを誑かす…あんたなんか…

死んで罪を償いなさい!」

バンッ

弾丸が飛んできた…当たってたら即死だぞ?!正気の沙汰じゃあない!

「貴方を殺して私は秋山さんと永遠に愛を誓い合うんだ!だから…死んで!死になさい!」

「ごめんね!一旦寝てて!」

「あうっ」

私は昔格闘技を習っていたので手刀で気絶させた

このまま殺す事も可能だったが…それをしたら全てを失う気がして…出来なかった

「はぁ、はぁ」

私は走った、全部投げ出して逃げ出したかった

私は何を間違ったのだろう…どうして他愛の無い平穏な日常を壊してしまったのだろう…

私はただ、真理亜と遥香と一緒に平穏な毎日を過ごしたかった、それだけなんだ、それ以上は何も望んでいないのに、もう一度やり直せるとしたら…考えるのは止めよう、考えても無意味だ

もうすぐ、"お迎え"がくる、心の底から絶望してしまった…私に待っているのは…

「ブラボー…いや、言うまでもないかしら」

「もう、一思いに私を殺してくれよ…生きるのに疲れたんだ…」

「お望み通り殺してあげるわ、でも、最後に一つだけ聞きたい事があるのだけど…」

「いいよ、早くしてくれ」

「もし、過去に戻れるとしたら、どうする?」

過去に戻れる、もしそんな事が出来るのなら

「貴方を転校してきた瞬間に殺す!」

「おぉ怖い怖い、それじゃ貴方を今からデリートするわ、バイバイ地獄で会いましょう」

「あぁ、そうだね…それじゃさよな…」

バンッ

夕暮れの空に弾丸の音が虚しく響いた




「……ねぇ、始めてにしては、上手く出来たんじゃない?」

霊子の影から人影が飛び出た

「お前は…甘い…幸福屋としては…28点だ」

霊子は笑い飛ばした

「28って酷くない~?これでも結構頑張ったのよ?ノルマも達成したしね」

「ノルマを達成したからと調子に乗るな、今回は運が良かったが、"ネクロマンサー"に遭遇したらどうするつもりだ?」

「ネクロマンサー?何それ」

影の人間は呆れた声で言った

「俺たち幸福屋を殺す事が出来る魔法使いさ、もし出逢ったら俺たちは即死さ」

「そうなのね、気をつけるわ」

影の人間は満足したような声で言った

「分かったならいい、現在幸福屋は急速に減っている、何故か、分かるか?」

霊子は自信満々に言った

「ネクロマンサーの仕業でしょ!」

「それもあるが…まぁ良いだろう、せいぜい少ない寿命で頑張るんだな」

霊子は怒りを我慢しながら言った

「えぇ、余計なお世話どうも」

寿命が減ったのは貴方たちの仕業じゃない!

静寂の地にあるのは、死体と幸福屋だけだった




























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