青春といえば夏だけど私の青春は冬だった。

藍無

第1話 冬の病室。

「ああ、死にたくないよお。」

せっかく、せっかく好きな人ができたのに。

もう一人じゃなくなったのに。

なのに、どうして。

どうして、今なの?

もっと、もっと生きたかったよ。

零花れいか。。」

彼が私の手を握ってくれる。

そのきれいな瞳に涙をいっぱいにためて。

今にも泣きそうなのに、泣くのを我慢している私の愛しい人の顔。

ああ、どうして。

どうして、一人だったときじゃなくて今なのかなあ。

私と彼を出会わせてくれたのは、最後の神様の気まぐれ?

会えたのに。

なのに、どうして、どうして私の体は動かないの。

どうして、もうさようならなの?

どうして。

孤独の底から、彼に出会えて、私の世界はやっと色づき始めたのに。

どうして。

まだ、彼と一緒にいたかったのに。

まだ、やりたいことがいっぱいあったのに。

まだ、未練がたくさんあったのに。

なのに、どうして?

昨日まで、生きているのが不思議なくらいだって、本当は亡くなっていてもおかしくないって、お医者さんが言っていたのに。

昨日まで、生きていれたのに。

どうして、よりによって今日___彼の誕生日に。

どうして

―――――

これは、とある少女の一冬の物語。

―――――

「余命はあと、もって一か月、ですね。」

「そうですか。」

やっと死ねるんだ。

この孤独で寒い世界から、やっと自由になれる。

だれも、私が死んだところで困らない。

それどころか、入院費がなくなって、私の親は喜ぶだろう。

その分のお金を双子の姉に使えるのだから。

いつも、私の両親は双子の姉ばかりをかわいがっていた。

わたしは厄介者扱いだった。

いつも。

やっと、厄介者が居なくなって、姉もよろこぶんだろうな。

あいつらの喜ぶようになってしまうのは、少し悔しいけど、その面にこぶしを一撃入れてやりたいような気持になるけど、私にそんな気力はもう残っていない。

こんな世界、くそくらえだ。

本当に。

最後くらい和やかな気持ちで死にたかったけど、それも無理そうだな。

両親も、姉も、私のことを嫌っているし、私も、両親と姉のこと、嫌いだから。

とても穏やかな関係にはなれないし。

私の財産はみんな両親や姉のものになるのかな。

それはいやだから保険として遺書を残しておいたけど、結局そうなっちゃうかもなあ。両親なんて、一度も私のことをかわいがったことも面倒を見てくれたこともなかった。

こんな寒い中で、死ぬのかな。

外は雪がしんしんと、降っている。

寒いなあ。

そんなことを思いながら、診察室を出て、私は病院の中庭に来た。

雪がきれいで、花の上に積もっている。

すごくきれいだった。

「君、だれ?」

透明で透き通った声がした。

振り返ると、真っ白な髪を持つ少年がいた。



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