壊滅──アメリカチーム
俺の名はジョン・ドゥ。名もなき衛兵だ。今回俺は、国からの依頼でこの「混沌の迷宮」とかいうダンジョンの攻略をしている。何でも、ここを攻略しないと世界崩壊の危険があるんだと。……まあ、俺は衛兵。金さえ払われれば、どんな依頼だって受けるさ。
「ジョン!」
そう俺に呼びかけるのは、今回のパーティーメンバーの1人、ギルだ。そして彼の声が届くと同時に、俺に向け数多の魔術が飛んでくる。だが……。
「……はっ!」
全ては俺の拳の前には無力だ。俺が拳を振るえば目の前の全てが消し飛ぶ。たとえ魔術であろうと、それは変わらない。
そのまま俺は魔術を放った主 ── 第十九階層フロアボスである、
「……行くぞ。」
不死ノ識者が消滅したことを確認した俺は、先を急ぐ。
そのまま次の階層に続く階段を降り、扉を開ける。
そしてその中にいる
「な……何なんだ……あいつは……!」
俺を除いて唯一発狂しなかったギルが、震える声でそう言葉をこぼす。
「……あいつが何であろうと、やることは変わらない。俺たちはただ、目の前の敵を滅ぼし、進むだけだ。」
「あ、ああ!そうだな!」
ギルは俺の言葉に精神の安定を取り戻したのか、得物である
── おそらくこいつは、物理攻撃に対する高い耐性を有しているのだろう。だが、俺の
── だが、俺の拳が当たっても
(何だと……!俺の拳が効かない……だと……!)
俺は何度も拳を
〔無駄だ。我らには効かぬ。〕
その瞬間、俺の頭にそんな声が響く。
「……何?」
〔見たところ、主は魔力をほとんど保有しておらぬな?〕
その言葉に、俺はどきりとする。確かに俺は保有魔力がほとんどないが、それを伝えたことがある者はいないはずだ。それを一瞬で見抜いただと……?
「……そうだが、それがどうかしたのか?魔力がなくとも、俺には技がある。」
〔だから、それでは無駄だと言っておる。見たところ、お主のスキルはあらゆる耐性を無効化し、相手の防御力に関わらずダメージを叩き込む、と言ったスキルだろう?〕
「唯我独尊」の効果までも言い当てられ、今度こそ俺は動揺する。まさか、こいつ……!
しかしその俺の仮説は、次の一言に吹き飛ばされることになる。
〔しかし、それは間違っておる。それの効果は、"僅かでもダメージが通った場合、それを増幅し相手にダメージを与える"というものじゃ。しかし、それはあくまでダメージが通った場合じゃ。我ら『犬』は、あらゆる物理攻撃を
そう言うと
── こいつ、どこまで俺を侮辱すれば気が済むんだ……!……いいだろう。そっちがその気なら、やってやるよ……!
俺はその無防備な腹に向け、拳を連続で叩き込む。今まで、あらゆるものを破壊してきた最強の一撃。それが、全く効いていない。
〔……もういいじゃろう。お主も人間にしては強かったが……相手が悪かったの。〕
その声を最後に、俺の頭は胴体から切り離された。
── アメリカチーム、第二十階層にて全滅。
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