戦闘と帰還

いやー、にしても大きいのが出たなぁ。僕は呑気にもそう思いつつ、目の前に出現したドラゴンを見る。この感じ、コアも取り込んでそうだな。


僕がそんなことを考えていると、不意に低く、威圧感たっぷりな声がする。


〔汝、何故我を破壊せんとする?〕


〈キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!〉

〈モンスターって喋れるの!?〉

〈そんなの聞いたことないぞ!?〉


「こっちとしてはこれ以上ダンジョンが増えると困るんだよね。この辺、一般人も多いし。」

〔そうか。ならば、これ以上の対話は不要か。〕


そう言うや否や、ドラゴンはこちらに向かい火の玉を5つ放ってくる。僕はそれをひらりと躱すと、空中に立つ。


── うーん……だいぶ硬そうだなぁ……。僕はドラゴンを、こう感じる。これを魔法だけで削り切るのは難しそうだ。そう判断した僕は、


「おいで、雷虎。」


と呟く。


その瞬間、僕の手元に一振りの刀が出現する。それは薄く紫電を纏っており、ほのかに紫色に光り輝いている。それを手に取った僕は、一瞬でドラゴンに肉薄すると、その体に向け刀を振るう。


「やっぱりこの程度じゃ傷はつかないか。」


しかし、その刀はキンと音を立て、竜の鱗に阻まれる。


〈どこから刀出てきた!?〉

〈それよりも刀で斬られても傷一つつかないって……〉

〈硬すぎだろ!〉


〔その程度では、我を傷つけることもかなわぬぞ〕


そう言いつつ、ドラゴンは次々と火の玉をこちらに放ってくる。

それを躱しつつ、僕は鱗と鱗の隙間を縫って浅く斬りつけていく。


〈一応ダメージは通ってるっぽいけど……〉

〈このままじゃじり貧だな……〉


── まだだ。この体勢じゃとどめまで向かえない。僕はドラゴンの放つ攻撃を躱しつつ、そう考えていた。布石は打った。あとは、タイミングが合うのを待つだけだ。


するとなかなか当たらないことに苛立ったのか、ドラゴンが大振りの、尻尾による薙ぎ払いを行う。


── 今!


僕はそれを躱し、ドラゴンの体幹がブレたのを確認して、


「開花。」

と、小さく呟く。


その瞬間、ドラゴンの鱗と鱗との隙間から、一気に血が噴き出す。


〈なんだ!?急に血が!〉

〈何をしたんだ!?〉


〔な、なんだこれは!?〕


ドラゴンが戸惑いながらそう叫ぶ。


「何って、簡単なことだよ。あらかじめ仕込んでおいた斬撃を、こっちが一気に解放しただけ。」


僕はそう答えつつ、ドラゴンの胸元へと肉薄する。ぼくの狙いに気付いたのか、ドラゴンは胸元を守ろうとする。だけど


「もう遅いよ。それに、もう視えてるから。」


僕はそう言い、ガラ空きになった胸元に突きを放つ。


「三式・雨穿あまうがち。」


その突きはドラゴンの表皮を簡単に突き破り、その奥のダンジョンコアごとその肉体を貫く。


〔み……見事……なり……。〕


ドラゴンは最後にそう言い残し、そのまま地に倒れ伏す。そして身体の端から塵となっていったかと思えば、そこには数枚の鱗と2本の牙、そして穴の空いたダンジョンコアが残される。鱗と牙を拾った僕は、ダンジョンコアに向き合うと、一息でそれを砕く。するとその破片は僕の体に吸い込まれていき、後には静寂だけが残る。


〈すげえぇぇぇええ!〉

〈ドラゴンを単独ソロで討伐だと!?〉

〈てか、あの技何!?〉


ふとコメント欄を見ると、なんだか大騒ぎだ。あれを1人で討伐するのって、けっこう簡単だと思うんだけどなぁ……。


すると突然、ダンジョンが振動する。それはだんだんと大きくなっていき、それと連動するように部屋も崩れていく。


〈なんだ突然!?〉

〈まさか……ダンジョンが崩れるのか!?〉


── うーん、どうしようかな?ここまできた感じ特にめぼしいものはなかったけど、一応回収していくか否か。


〈何やってるの!〉

〈早く逃げて!〉


── よし、一応拾っていこう!この間一条さん、ダンジョンの壁とかのデータが欲しいって言ってたし、それを拾いつつ行こうかな。

僕はそう決めると、一気に走り出す。


〈うお!〉

〈早っ!〉

〈最初とは違うけどこっちも酔ううぅぅぅ〉


崩れていくダンジョンの中を駆け抜けつつ、僕はあらわになった宝箱やダンジョン内の壁や宝石を回収していく。そして


〈あっ、出口だ!〉


僕は出口のゲートをくぐり、外へと飛び出した。

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