第8話: 閉ざされたラボの真実
翔たちはユナの家族が囚われているという実験施設への潜入に成功した。搬入エリアから地下へ続く貨物エレベーターを降りると、空気は急に冷たくなり、不気味な静寂が漂っている。
「……ここが実験施設か。」
翔が低い声でつぶやくと、ユナが険しい表情を浮かべながら答えた。
「間違いない。私の家族はこの先にいるはずよ。」
ルーメンがスキャンを終え、周囲の構造を確認する。
「セキュリティシステムはまだ起動していませんが、奥に高エネルギー反応を検知しました。慎重に進みましょう。」
カイリが軽く肩をすくめて笑う。
「慎重にって言うけどな、こういうのはだいたい最後に大きな罠が待ってるもんさ。」
「お前の冗談は笑えないんだよ。」
翔がぼやくと、カイリは肩を叩いてから先に進む。
囚われた人々
施設の奥へと進むと、大きな強化ガラスで仕切られた部屋がいくつも並んでいる。部屋の中にはベッドに固定された人々が眠っており、その多くが衰弱しているように見えた。
「これって……」
翔がガラス越しに目を見開く。ルーメンが冷静にデータを解析しながら言った。
「彼らは人体実験に使われている可能性があります。生命維持装置によって無理やり生かされている状態です。」
ユナの表情が歪む。
「許せない……! あの人たち、ザイム心理教の実験の犠牲者だっていうの!?」
カイリが周囲を警戒しながら言葉を続けた。
「ザイム心理教は暗号通貨XLMの技術を利用して、人体の神経ネットワークを直接操作しようとしているって噂だが……どうやら本当らしいな。」
翔は眉をひそめながら質問した。
「神経ネットワークを操作? 一体何のために?」
ルーメンが部屋の端末に接続し、データを読み取った後、静かに答える。
「この実験は、個人の意志を完全に支配する“マインドコントロール”技術の開発を目的としているようです。」
「……人の意志を支配するってことか?」
翔は信じられないという表情でルーメンを見た。
「はい。それが完成すれば、ザイム心理教は信者だけでなく、都市全体の住人を意のままに操ることが可能になります。」
「そんなこと……許せるわけない!」
ユナが拳を握りしめ、激しい怒りを露わにする。その時、彼女の視線がある一つの部屋に止まった。
「……あそこにいる!」
翔たちが視線を追うと、ガラスの向こうのベッドに横たわる中年の男性と幼い少年の姿が目に入った。ユナの目から涙がこぼれる。
「お父さん……レイ(弟)……!」
救出の決意
ユナが駆け寄ろうとした瞬間、施設の奥から機械的なアラームが鳴り響いた。
「警告――侵入者を確認しました。セキュリティシステムを起動します。」
「マズい、バレたか!」
カイリが舌打ちをしながら背後を警戒する。
ルーメンが冷静に状況を報告する。
「自動防衛システムが作動しています。この施設内のすべての出口が封鎖されました。」
「閉じ込められたってことかよ!」
翔が焦りを隠せないでいると、ルーメンが続けた。
「制御室にアクセスすれば、封鎖を解除できる可能性があります。ただし、その前に防衛ドローンがこちらに向かってきています。」
カイリがナイフを構えながら笑う。
「派手な歓迎会になりそうだな。翔、ユナ、お前らはここで家族を助けろ。俺とルーメンでドローンを片付ける。」
「おい、勝手に決めんなよ!」
翔が言い返すが、カイリは軽く肩を叩いてこう言った。
「俺を信じろ。それに、家族を助けるのはお前たちの役目だろ?」
翔は少し迷ったが、カイリの目を見て決意を固める。
「分かった。任せたぞ!」
家族の救出
翔とユナは急いでガラスの仕切りを解除するため、ルーメンの指示を受けながら端末を操作する。
「こんな時にまでハッキングとか、本当に映画みたいだな……!」
翔が悪態をつきながら操作を続けると、ガラスの仕切りがゆっくりと開き始めた。
「お父さん! レイ!」
ユナが駆け寄り、彼らをベッドから解放する。二人とも衰弱しており、意識がはっきりしていない。
「大丈夫だ、ユナ……必ず助ける。」
翔がそう声をかけると、ユナが涙を拭いながら頷いた。
次なる脅威
家族を解放し、急いで出口を目指そうとする翔たち。しかし、その道の先には予想もしなかった存在が待ち受けていた――
施設の奥から現れたのは、ザイム心理教の兵士たちではなく、一体の巨大な戦闘用ロボットだった。そのボディには、ザイム心理教の紋章が刻まれている。
「……何だよ、これ……!」
翔が後ずさる中、ルーメンが警告を発する。
「敵機体のエネルギー反応を確認。非常に危険です。」
ユナは家族を守るように立ちはだかりながら、翔に叫ぶ。
「翔! 逃げる方法を考えて!」
翔の目には、再び恐怖と緊張が走る。だが、その奥には小さな決意の炎が燃え始めていた――
次回予告
戦闘用ロボットが立ちはだかる中、翔たちは脱出を図らなければならない。仲間たちと家族を守るため、翔はどのような選択をするのか。そして、ザイム心理教の実験施設には、さらなる恐るべき秘密が隠されていた……。
次回、第9話「鉄の巨人との戦い」。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます