第2話



 一週間の終わりの平日は、大体は少しだけ気分が軽い。社会人になるまでは思いもしなかったけれど、確かに次の日が休みだというのは何にも代えがたいモチベーションだし、休み明けの月曜日はそれこそ死ぬほど気分が億劫だ。会社の入っているビルだって、月曜日はいつもより寒い。ビルでさえ気が重いんだ、人間の気が重くないはずがない。……本当は週末に使われないせいで建物が冷え切っているだけだとしても。


 パソコンを起動して、簡単に今日の予定をチェックする。昨晩退社するときにはなかった打ち合わせが新たに入っていた。それでも、頑張れば残業せずに帰れそうだ。プライベートのスケジュール帳を一瞥して、そう安心する。


「おはよー、麻那まな


 ぽんっ、と肩を軽く叩くと同時に、同期は反対側の肩に顎を載せた。甘えたその仕草には慣れているから、叩かれたほうとは逆側を振り向いた。


「おはよ、友加梨ゆかり

「ねー、今日の夜、飲みに行かないってかジンギスカン食べない? なんか無性に食べたくって」

「ごめん、今日は先約ある」

「ちぇー。どうせ例の彼氏でしょ」


 同僚以外札幌に友達はいない、そんな私に先約となれば彼氏と相場は決まっている。とはいえ、はっきり口に出されると「まあ……」とい言い淀んでしまった。


「いいよね、付き合ってもう三年くらいだっけ? わざわざ東京から札幌に会いに来てくれるし」

「私に会いに来るっていうか、彼のクライアントが札幌にいるから、ついでに私に会ってるっていうか」

「そんなこと言って、今日も気合入ってるよ?」


 大雪にも構わずファー付きのコートを着て、薄手のワンピースを着てるくせに――友加梨は下世話な笑みを浮かべながら私の首に手を回す。


「本州から来た人って、大体寒さに耐えられないで超着こんでるのに」

「私はほら、寒さに強いから。普段から薄着だし」

「いーえ、誰が何と言おうと、あなたは彼氏と会う日は気合を入れてます。森本くんなんて、それで麻那に彼氏がいるって気付いてへこんだくらいだし」


 一時期積極的に飲みに誘ってくれていた同期の名前まで出して「じゃ、ジンギスカンはまた今度ね」と友加梨は腕をほどく。


「いーなー、あたしも年上彼氏に愛されたーい」


 からかうように私の肩を叩いて笑う、その顔には、苦笑いしか返すことができなかった。

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