Revenant・Radio~怪盗を追い詰める陽気な配信者は最強の追跡者~

ナインバード亜郎

世界観という名のまえがき

 はじまりは、たった一人の平和への理想だった。

「人間の差の一切を排除し、統一された価値観の下の平等の上に築く平和」という誤った理想。

 それを叶えるために生み出されたのが、人間の思想を侵食し、その理想に塗り替えるウイルスだった。


 ウイルスは人類がコミュニケーションに要する、あらゆる全てを媒介として人に感染し、感染者がコミュニケーションとして発するあらゆる全てを感染経路とし、世界中に拡散。

 その影響は栄華を極めた文明を徹底蹂躙し、隣人同士ですら信じられない憎しみの連鎖を生み出し、やがて隣人戦争と呼ばれる悲劇へと発展した。


 戦争が終結したとき、地球上の人類はその七割以上を喪失。

 わずかに生き残った人類もその殆どがウイルスに感染、人類の存続すら危ぶまれる状況に陥っていた。


 そんな絶望の中、人類を支えたのはエナリバイブNa:REvive社だった。

 彼らは人間そっくりの人工生命体「ナレ」を生み出し、数少ないウイルスの耐性者と共に文化を再構築、ようやく辿り着いた二十一世紀レベルの社会基盤を守る役割を担わせた。


 一方、感染した人類は閉鎖された都市空間、保菌者及び感染者療養型特別区域――通称アークシティにほぼ完全に隔離されている。

 そこでは人類の繁殖が慎重に試みられ、徐々にではあるが、無感染者として育った人間がアークシティの外側に増えつつある。


 外の世界では、ナレが社会の大部分を占めており、人間と共に生活を営んでいる。

 人間たちは少数派ではあるが、ナレが主導しつつも、ナレと人間が支え合いながら共存する形を取っている。

 いつか再び、人類が繁栄するその日を夢見て。


 物語の舞台は、このアークシティの外側。

 奇妙で賑やかな追走劇エンターテイメントが、この世界の片隅で幕を開ける――

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