哲走
浅野エミイ
哲走
太宰治は走れメロスを書いた。彼が何を訴えたかったかを私たちは知る由もない。国語によくある「作者は何を考えて書いたのでしょうか」というものの答えは、「作者にしかわからない」のだ。
ここで走る哲学というものについて考えてみよう。人はなぜ走るのだろうか。昔は飛脚というものがいただろう。伝書だ。『人に何かを伝えるために走っていた』ーー。だが、今の時代はそれだけではない。走ることで健康維持をすること、体や精神を鍛えることなども目的になってきている。
駅伝というのは長距離走るリレーだ。チームだ。襷を繋ぐこと。それが目的だ。確かに駅伝は競争の面もある。だが、あなたたちは何を理由に走るのか? もし、就活のためだと言うのなら、それはいい心がけとは言えないだろう。
人生というものも走ることと一緒だ。自分に恥ずかしくない走りをするべきだ。
ひとりで走ることもあるだろう。仲間とともに走ることもあるだろう。走れずに倒れることもあるが、人はまた立ち上がる勇気がある。自分のペースを守ることも大切だ。少し無理をしてしまうこともあるだろう。それでも、走ることはあなたたちにとって何を意味するものだろうか。
今の大切な時期にこの問いかけをすることはきっと酷だろう。それでも、あなたたちにとっての芯は何か。自分が誇れる自分になれるか。人に自慢するためではなく、自分に対して胸を張れる自分になれるか。思い出作りではなく、自分の確固とした礎にできるだろうか。
これは私にとっても課題である。なぜなら、書くことも走ることに似ているからである。
作家も、ランナーも場所は違えどともに走ろうではないか。
あなたたちの忌憚なき走りを期待している。もちろん、私自身の走りにも。
哲走 浅野エミイ @e31_asano
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます