ソレはデータにありません!?

風宮 翠霞

【序】 歴史が嫌いで何が悪い!!

「さ〜く〜やぁ〜!!」


「ひぃっ!!」


学校から帰ったら、家のリビングに鬼がいた。

いや……。


「お、お母さん……」


『激おこぷんぷん丸』とか言おうものなら殺されそうなレベルで、マジ激おこ状態の我が家の支配者––––お母さんが、私の成績表を握り締めていたのだ。


な、なぜその呪物をお母様が……!?

それはゴミ箱へと丁重に葬ったはずっ!!


「咲夜、座りなさい」


母が握り締めている三枚のプリントを見て目を見開き、絶句する私の耳に地獄への誘いが届く。

この怒り方は、確実に一時間説教コースっ!!


「なんで怒ってるか意味わからんし!! 座れとかマジ知らんし!! ……乱視」


「らんしらんしうるさいし、最後のやつは我慢出来たでしょう」


……我慢出来なかったから言ったのですが何か?

文句ある?

あ、待って……やっぱ勝ち目ないからタイム。


私は引き際をちゃんとわかっている中学生なので、気を取り直してお母様の説得に取り掛かる。


「ちゃ、ちゃんと全教科九十五点以上取ってるもん!! 八教科で百点だし!!」


なんなら、平均が五十点台のテストでも九十八点取ってるからね!?


私が通う学校は、国内トップクラスの進学校。

主要五教科が十教科に分かれている。


その中で八教科百点だよ!?

つまり、公立であれば四教科で百点と言っても過言ではない!!(過言)

先生にもめちゃくちゃ褒められるからね!?

お母さんも褒めてしかるべきでしょう!?


「全教科ぁ? 咲夜、貴方もしかして一教科を闇に葬り去るつもり?」


紙を伸ばして見やすくしたお母さんは、私の前でその忌々しき呪物成績表をヒラヒラと振った。


「な、なななななななななな何の事かなぁ? 咲夜ちゃん、平均が八十点なのに点数が一桁台の歴史の事なんて微塵もわっかんな〜い」


クソッ……親友に詐欺師と言われる原因になった口が、今に限って全然動かない!!

これがお母さん……いや、お母様の真の力、マザー・オブ・マザーの力かっ!!

などと考えていた私に……。


「ア、ン、タ、ねぇ〜……そこに、正座しなさ〜い!!」


「い、嫌だぁ〜!!」


母様、キレた。


「だからねぇ……だいたいいつも……」


むぅ……藍良あいらさんなら絶対にわかってくれるのに。


「ちょっと咲夜、聞いてるの!?」


「は、はぁい!!」


い、良いもん!!

お母さんのなっが〜いお説教が終わったら、すぐ藍良さんの研究室に行って慰めてもらうんだぁっ!!

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