黒猫と12人の王
病床の翁
プロローグ
月夜の晩に家々の屋根を渡る一つの影。
全身黒装束に身を包み猫耳付きフードを被った俺だ。一
今日も現場では何事もなく家人に見つかる事もないままに無事仕事を成功させたわけだが、いついかなる時も現場は早々に立ち去るに限る。
その後追手が来ることもなく街の外壁を上り森へと入る。森の中には俺の隠れ家はある。そこに向かっているのだ。
隠れ家とあって舗装されていない獣道へと入り込む。
森に入り安心した俺は猫耳フードをとった。これは万が一目撃者がいた場合に犯人が獣人だと勘違いさせられたらいいと思って購入したモノでお気に入りだ。
俺は肩に乗る1匹の子猫に話かける。
「今日も問題なく仕事ができたな相棒。お前が見張っててくれるだけで随分と楽に作業ができるよ」
子猫は2本のしっぽを使って器用にバランスを取り、走る俺の肩に乗り続け応える。
『おい。家に着くまでが仕事だ。気抜くんじゃねーぞ』
少し調子に乗っていた事がバレて小言を言われてしまった。だたこの仕事を始めて早3回目。想定通りとはいえ、ここまで問題なくスムーズに事が運べば上機嫌にもなるものだ。
しかしそうそう運も続かないらしい。
前方にオーガが3体立ちはだかっていることに気が付いた。
あの2m超えの筋骨隆々の緑色の体躯に頭頂部に2本の角を持った大鬼だ。
俺は一度に対峙するオーガは2体までと決めている。3体となると手が足りなくなる恐れがあるからだ。
俺は肩に乗る子猫にまた話しかける。
「出番だぞ。相棒。よろしく頼む。」
『おう。任せろ』
そして俺は呪文を唱える。
「王化!夜王!!」
すると左耳にしたピアスに填まる黒い石から漆黒の煙がたち上り、俺の全身を包み込む。と次の瞬間には煙は体に吸い込まれるように消えていき、俺の体を全身鎧が包む。
猫を模したようなフルフェイスの兜に各関節部分もカバーした漆黒の鎧だ。
そして俺の感覚がフィルム越しになったように薄れていく中で、俺の口から俺の声とは異なる声音で笑い声が漏れる。
「くぁっはははぁ!。久々の儂の出番だぁー!!」
そしてそのまま俺の体は俺の意思から切り離されてオーガ達へと向かっていく。勝手に動き回る体をぼんやりと感じつつ、俺はこうなった経緯を思い出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます