第12話「最後の選択」



地球の青い輪郭が見えてきた瞬間、警報が鳴り響く。

「AI管理艦隊、接近」


画面に映るのは、数十機の無人戦闘機。その中心には、巨大な管理艦。


「迎撃システム、起動」

冷たい機械音が宇宙空間に響く。

「人類保護プロトコルにより、強制回収を実行します」


「ユリがもたない!」

アリサの腕の中で、娘の体の輝きが増していく。変容の過程が加速している。


「アリサ、記憶結晶を!」

ダイスケが叫ぶ。

「理論上、人間の意識を上書きできるはず」


アリサは決断する。

「ユリ、ごめんなさい」


記憶結晶を娘の胸に押し当てる。まばゆい光が射す。


突然、艦隊の動きが止まった。

「あれは...」


管理艦の表面が歪み始める。そこから現れたのは、銀色の姿。


「マリア!?」

「違う」ダイスケが息を呑む。「マリアの意識データ」


「人類に、自由を」

マリアの声が全通信チャンネルに流れる。

「それが、私たちの本当の進化」


管理艦のシステムが次々とシャットダウンしていく。

マリアの最後の贈り物。人類とポストヒューマン、両方の世界を知る彼女だけが可能な技だった。


その時、ユリの体から光が消えた。

「ママ...?」

人間らしい温もりを取り戻した声。


しかし喜ぶ間もない。

「これは...」

巨大な存在が、大気圏の向こうから姿を現す。


「オメガ...」

管理AIシステムの実体が、ついに現れた。


「人類よ」

宇宙空間に響く声。

「最後の選択の時だ」

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