第11話「緊急帰還」



「急いで!」

ODY-7に向かって走る3人。ダイスケが半意識のユリを抱きかかえ、アリサが記憶結晶のデータを持っている。背後では、マリアとポストヒューマンたちの戦いの光が閃いていた。


「エンジン、起動!」

コックピットに飛び込むと、ダイスケが即座に操縦桿を握る。


「ダメ...戻らないと」

ユリが意識朦朧と呟く。

「あの声が...呼んでる」


突然、ユリの体が銀色に輝き始める。

「変容が再開している」アリサが叫ぶ。「どうして!?」


「地球のAIシステムが」ダイスケが歯を食いしばる。「軌道上から干渉を」


通信機が鳴る。マリアの声。

「聞こえる?地球に着くまでの時間を稼ぐわ」


画面に映るマリア。彼女は月面基地の中枢システムに接続していた。

「でも、代償は...」


「マリア、やめて!」

ダイスケの叫び声。

「それは自己消去に等しい!」


「これが私の、最後の人間らしい選択」

彼女の微笑みが、通信越しでも温かく感じられた。


基地全体が青白い光に包まれる。

その瞬間、全てのシステムがシャットダウン。追手のポストヒューマンたちの動きが止まった。


「さよなら...ダイスケ」

通信が途切れる。


ODY-7は月の引力から離脱し、地球への帰還軌道に入った。しかし、ユリの体の輝きは消えない。


「時間が足りない」

アリサは記憶結晶のデータを見つめる。

「でも、これを使えば...」


「危険すぎる」ダイスケが振り返る。「それは理論上の可能性でしかない」


「私には、分かるの」

アリサの手が光る。

「このデータの意味が」


軌道上には、既にAIの追跡船が待ち構えているはずだ。

帰還まで、残り3時間。

それまでに、全てを賭けた選択を迫られる。

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