第3話 誕生日

「朝よ!起きなさいナイン!」


そう言いながら布団をひっぺがす女の子はメイ・シンフォードだ。


「もっと優しく起こしてくれよ、姉さんを起こすみたいに......」


「フラン様はあんたみたいに朝から文句言ったりしないわよ!あんたもアルバート家としての自覚を持ちなさい!」


アルバート家は代々この辺境の地を治める辺境伯家であり、僕はそこの長男として産まれたらしい。


そしてメイの産まれたシンフォード家はこの辺境伯家に代々仕える家柄だと聞いた。


「そういえば奥様がプレゼントは何が良いか考えといてって言ってたわよ。」


「誕生日ぐらい祝ってくれよ〜、僕だって凹むんだぞ......」


なんと今日は僕の5歳の誕生日なのだ!


だからといってメイの僕への対応は変わらないらしい......


メイが僕を嫌う理由は何となくわかっている。


自分が仕事をしているにも関わらず自由奔放な生活を送っている僕が気に食わないのだろう。


それはそうだ、僕はこの5年間貴族としての習い事をすっぽかし、剣と魔法のこの世界に心を躍らせ没頭していたのだ......


「もう皆様揃ってるんだから急ぎなさいよ!」


そう言いながらメイは部屋を出た。


「プレゼントか......」


プレゼントを考えながら歩いていると食堂に着いた。


「誕生日おめでとうナイン!!また大きくなってエラいわね!!」


そう言いながらセミのように抱きついてくるのは歳が1つ上の姉であるフラン・アルバートだ。


姉さんは魔術と剣術の両方に秀でており、100年に1人の逸材と言われている、いわば "天才"である。

しかし、ブラコンだ......


「ナイン君お誕生日おめでとうございますぅ!プレゼントは決まりましたかぁ?2人とも愛してますよぉ〜」


「僕も愛してますよ母様、プレゼントは夜までに考えておきますから2人とも離れてください!」


誰もが羨む美貌を持ち僕と姉さんを抱きしめるこの人こそ、この世界での母親であるシャルル・アルバートだ。

とてもたわわだ......


「おめでとうナイン。明日から剣術と魔術の先生に来てもらうから準備しておきなさい。」


「わかりました父様。」


アルバート辺境伯家現当主クルガ・アルバート、僕の父親である。

かつては王国騎士団長だったが姉さんが産まれてからは辺境騎士団の指揮官としてこの地に戻ってきたイクメンである。

父親の鑑だ。


朝食を食べ終え、いつも通り家の書庫で魔術の勉強をしていた。


「他者に魔力を分け与える魔法か......これだ!!」


誕生日プレゼントが決まり夕食の時間になった。


「ナインよプレゼントは決まったか?」


「はい父様......メイを僕の専属メイドにしてください!!そしてメイが剣術と魔術を学ぶことを許可してください。」


父様は1度は動揺したもののすぐに元に戻った。


「良いだろう。しっかりと励みなさい。」


メイは開いた口が塞がらないようだった。


「なななんでわたしが!?」


「何よナインに不満があるの?ナインはとっても良い子なのよ!!」


「ナイン君をよろしくお願いしますぅ〜いっぱいお世話してあげてねぇ〜」


「精一杯頑張ります......」


メイは母様と姉さんに丸め込まれた......


夕食を食べ終え自室に戻るとメイが全速力で部屋に来た。


「あんた何考えてんの!?私があんたのこと嫌いなのわからないわけ?」


メイは焦りと怒りが交じった表情で迫ってきた。そんなメイに僕は一言こう言った。


「メイ、魔力制御してるだろ」


僕がそう言うとメイは驚いた顔をしていた。


「大雑把だけど十分だ、一緒に勉強しないか?」


「どうして分かったの......」


僕だって魔力制御してるのに気づかないわけないだろ!と言ってやりたいところだがここは1つ。


「メイのこといつも見てたから。」


多分ここで良い感じの曲が流れたと思う。


メイはソワソワしながら照れた表情を浮かべていた。


「その...あの...あぁ!!これからよろしくねナイン!!」


メイはそう言うと部屋から出ようとドアノブに手を掛けたが赤い顔をこちらに向けた。


「遅くなったけど、誕生日おめでとう......」


「ありがとう!!これからよろしくメイ!!」


そう言いながら僕が微笑むとメイは恥ずかしそうな表情で部屋から出ていった。


あんなにコロコロ表情の変わるメイは初めて見た。


「明日からが楽しみだな。」


そう言うと僕はゆっくりと目を閉じた。

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僕"時間停止"ができるんだが、ナニをする? モッチモチ月 @motimotizuki

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