第3話
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宰相は真っ先に『気の毒な一族』の遺体を回収して、アレグリアの遺体とともにフォンデン元侯爵一族の埋葬地に丁重に葬らせた。
国王を始め、誰ひとりとしてそれに反対する者はいなかった。
王妃の自供とも告白とも言える謝罪、そしてマジョルカが繰り返す責任転嫁。
すでにアレグリアの問われた数々は冤罪だったことは、すでに公表されている。
それを企てたのが、王妃と
そして側近や取り巻きの子息令嬢たちだった。
王妃は廃妃に、王太子は廃太子となりマジョルカとともに【
側近や取り巻きの子息令嬢たちもまた罪を問われた。
家から追放・除籍されて平民に堕とされた者。
娼館や男娼館に売られた者。
鉱山労働者として過酷な環境で罪を償う者。
贖罪のため、自死することも許されない。
アレグリアの【遺した言葉】を知るある侯爵家当主は、少しでも家族や一族を守るため。
そのために、アレグリア
しかし、箝口令が敷かれたがためにアレグリアの最期の言葉を知らない本人や家族からは抗議の声があがる。
「父上は褒賞を受け取ったんじゃないですか! それなのになぜ私が罪を問われなければならないのです!」
真っ先にその言葉が出た。
当然だろう。
王城でその褒賞を受け取り、祝宴に出席して帰ってきた父親が、息子や娘を部屋へ呼んだのだ。
褒められて然るべき状況で言い渡されたのが追放や除籍。
貴族籍の剥奪などという、天国から地獄へと真っ逆様に突き落とされたのだから。
泣いて助けにもならない母親に
そして聞かされた、アレグリアの死と……信じていた王太子たちにより明かされた、
それに息子と娘が関わっていた。
見逃してもらう?
……誰に?
許してもらう?
…………誰から?
それらの権限を持っているはずの老若男女全員が、死者の門を潜っている。
無実だと……冤罪だと知っていたであろう娘はその場で頽れていた。
アレグリアに恨みなどない。
ただ、『誰かを
それが王太子が選んだ真実の愛を妨害する
……後ろに王太子と『王太子妃に相応しい令嬢』がいる。
たとえ相手が侯爵家の令嬢で自身よりも家格が上だろうと、罪に問われるはずがない。
誰もがそう勘違いしてしまったのだ。
それを自覚したらしい娘は、自身の犯した罪の重さからか、手をあわせて呪文のように謝罪を繰り返す。
自覚できていない息子はまだ当主の決定に歯向かおうと声を荒げる。
「罪を問われるにしても重すぎます!」
「人を殺したのに、か?」
「…………確かにアレグリア嬢の冤罪に加担する形となりました。ですが!」
「では、フォンデン侯爵家一族を滅ぼした罰として、我が一族も皆殺しになれとでもいうのか?」
「そ、れは」
「王妃殿下、いやすでに廃されて廃妃となられたが……ニールレット廃妃は罪の重さに耐えられず自我を失った」
「…………!!」
「お前が仕出かしたことがどんなに小さなことだったとしても。一族百数十名もの生命を奪ったのだ、お前たちのその手が。
無垢な幼な子を。エバンスよりも小さな、赤子の生命さえも……お前たちは処刑台に送ったのだぞ!」
エバンスとはまだ3歳に満たない、この家族の天使。
彼にとって甥にあたる、無邪気な罪なき魂。
「お前はその血塗られた手でエバンスに
自分の両手を見つめながら父親の言葉を聞いていた子息。
その目に映るのは、だんだんと血塗られていく両手。
滴る血には無数の人の……血の涙を流した顔。
…………その中にエバンスの顔も、弟妹や兄夫婦まで現れては消えていく。
自分の婚約者の苦しむ顔も、両親や大恩のある剣術の師の顔も浮かんでは呪いの言葉を吐いていく。
『どうして……?』
『あなたが』
『あなたのせいで』
『軽率な言動は改めなさいと……あれほど』
『許さない』
『『『すべてはお前たちのせいだぁぁぁ!』』』
「う、あ…………ああああああああ! ああああああああああああ!」
どんなに頭を抱えて後悔しようと、喪われた生命は還ってなどこない。
娘の方は父親の言葉と母親の姿でそのことに気づいたのか、ひたすら謝罪を繰り返すだけだ。
その声も、父親の「我が一族も皆殺しになれとでもいうのか?」という言葉で止まる。
言葉の重さに気がついたのだろう、「一族を守るためにお前たちには罪を償ってもらう」という…………
どこの家でも似たり寄ったりの言い合いが行われた。
最後に自身の犯した罪の重さを自覚し、戻らない過去と自身の愚行を後悔し、その手で奪った生命の重さに押し潰されるような奇声をあげ続けた。
「これも呪いだろうか」
ひとりになって、当主はため息と共に独り
返ってくる言葉はない。
あるのは、脳裏に浮かんだ『罪なき一族の笑い声』。
ある当主はそれが楽しそうに聞こえ、別の当主には嬉しそうだったという。
それは、自分たちを死に追いやった者たちの破滅を喜んでいるのか。
それとも、これがまだ破滅の序章だと嘲笑っているのか。
正しい答えなど、出ることはない。
当主の胸の内に深く刺さって残る、罪という名の
……ただそれだけが
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