第7話 「珍格」爆発花火職人【ヨグ=ルトソース】

「お、繋がった。大丈夫そうか?」


 電話をかけて5分ほどだろうかやっと繋がった。さすがに導入直後に死亡lostすることはないだろうが、電話に出られない状況だったとしたら不安だった。


「大丈夫って?私の方は道で会った女の子と話してただけで問題はなかったよ」


ん?なんか詳しく聞きたいことをサラっと言ってないか!?コールが鳴らないって何かのイベント臭いよな……?


「そういえばどうやって電話をかけれたの?私みんなにかけようと思ったんだけどかけれなくて……」


「OKそれについては後で教える。俺も薫に聞きたいことができたし、一旦合流しよう。」




 薫が居た場所と俺が居た出版社は近いところに建てられていたため合流はすんなりとできた。話を聞いてみると狂ヶ原くるがはら叶愛とあ、この町の名前と同じ苗字の女に声をかけられた、と……


いやくっさいわ!!!絶対に何かのフラグだ。連絡先も手に入れた様だし、二人と合流するまでは放置でいいだろう。


 それにしてもこのゲーム本当にすごい。街並みのクオリティに関しては言わずもがな、見た感じ街を歩いているNPCのひとりひとりがそれぞれの会話をし、それぞれの生活を送っている。ここにはただ作られたものゲームではなく現実リアルが広がっているように見えた。


「ヒバナさんとヤサガラスさんとはどうやって合流する?」


「二人の職業はGMの蛭助から聞いた。こちらからアクションするのは難しそうだから、あっちからのアクションを待つしかなさそうだ。ヒバナ奴は...」


ドゴオオォォォン


道路を歩いていると商業地域の方から謎の爆発音が聞こえてくる。


「え?ちょっ、な、何今の爆発音!?ここから離れよう!アララギ君!」


「あー……いや多分大丈夫だ」


 困惑する薫を連れ、人だかりのできている方向にむかって歩いていく。建物の一角が崩壊していて軽い火事になっていた。その人だかりの近くに一人だけ馬鹿みたいに目立つ服装の女が立っていた。

そいつはショートヘアの赤髪を後ろで結び、下駄をはいている。一番特徴的なことはを巻いていることだ。NPCではないことにいやでも気が付いてしまう。


「おい!お前どんな服装で……むぐっ!」


 口を手で塞がれ喋ることができなくなる。なぜかついでに鼻も塞いでくるから呼吸が苦しい。


「まぁまぁ落ち着いて、一旦ここから離れよね~~~」




爆発地点と反対方向に歩き、人が少なくなったところで解放される。

あぁ空気ってうめぇなぁ


「お前!お前なぁ!殺す気か⁉つか何してんだよマジで!?」


へらへらとしているヒバナに対し声を荒げ最大限の講義をする。


「さ、さっきはなにが起きたんですか!?」


未だ困惑する薫に対しヒバナが答える。


「私の職業花火職人なんだよね。誰でもいいから合流したかったからさ、取りあえず手持ちの花火の火薬を全部集めて作った爆弾をあそこで爆破させたんだ。」


顔色を一つ変えず淡々と述べているがやってることはただのテロリストだ。

ってかおいちょっと待て


「お前爆弾の作り方なんて知ってんのか?お前まさか……」


「ちょっと?変な妄想やめてくれる?ただ単に職業技能のダイスを振っただけだよ。初期値成功50%だったけどクリって60%に伸びたんだからね!」


 何故か胸を張り自慢するヒバナ。この馬鹿は置いといて、これはTRPGから派生したゲームVRPGということを忘れていた。ダイスの存在が頭からすっかり抜け落ちていたが、職業に関する技能はダイスで肩代わりにできるのか。


「これって私逮捕とかした方がいいんですかね……?」


「え!?カオルちゃん警察!?いやスーツだから刑事か?まぁ仲よくしようよ」


 笑いながら肩を組んでいる。あからさまに話を逸らしてるなこいつ……


「全部使ったって言ってたけどさ……もしかして一回しか使えなかったりする?」


「あ、いやお金使えば購入できるっぽい。所持数制限があってどのくらい持てるか分からないけど、安いから都度買えば何回も使えると思うよ。」


 満面サディスティックの笑みでこちらに顔を向けているが持たせてはいけない人間に、持たせてはいけない武器が渡ってしまい冷や汗と涙が止まらない。てか薫は銃を持ってるだろうし俺のオカルトライター雑魚すぎん???


「そういえばヒバナさんのPC名は何て名前なんですか?私とアララギ君は結構そのままの名前なんですけど」


「ん?あぁ私?ヨグ=ルトソース」


「え……?な、なんていいました?」


「ヨグ=ルトソース」


俺はもう考えるのを辞めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る