第2話 狂人からの無茶振り
「まったく私の最高傑作のシナリオをたったの5分で終わらせるなんてアララギ くんも罪な男だね」
「あれが最高傑作...だと?お前は一体今まで何人の被害者を生み出してきたんだ???」
「ま、あれが初めてのシナリオなんだけどね、それよりも初心者GMに対して厳しくない?......どう思う?ヤサガラスさん?」
ヒバナはこの場にいるもう一人の同席者に同意を求める。
「い、いや~GMが云々というよりかシナリオの方に問題がありすぎるかな…… まぁシナリオを選ぶのもGMの仕事の一つなんですけどね」
忌憚ない意見を述べてくれたでかい鴉のアバターのこの人の名前はヤサガラスという。この人は普段GMをしたりシナリオを作る配信をしている配信者だ。
普段はこの「ヤっさん」がGMをしてくれる。TRPG界隈だと結構有名だし、作るシナリオのクオリティが高いから何でRP重視の俺と、イカれてるヒバナのGMをしてくれてるのか割と意味が分からない人だ。
ヤっさん曰くシナリオテストしてくれるしプレイスタイルが好みらしい。
「本気でGMやりたいなら教えれることは色々あるけど...その必要はなさそうですね。」
「うん、私はアララギ君のいいリアクションが見れたから満足したかな」
なんだこいつ、ネクロノミコンの背でぶっ叩いてやりたい。
「そういえば二人はどうするの?VRPG」
「VRPG」聞きなれない単語だが少し前からのホットワードだ。現在国内外問わずフルダイブ型VRゲームが流行っている。その中で覇権を握っているフルダイブVR機器「ニューロジカル」を発売しているクラフト社から「カオス・ルルイエVRPG」という名前のゲームが発表された。
「テーブルトーク」ではなく「バーチャルトーク」だからVRPGらしい。VRゲームとなる過程で普段のルールと異なり、新規のルールが追加されるとのことだ。
基本TRPGをやる時は、フルダイブのVR交流アプリ、もしくは通話アプリでのプレイが基本だ。また旧ルールで既存のシナリオもできるらしいことからネットでは結構話題となっている。
公式から出されるシナリオはマルチエンディングで最大想定プレイ時間が100時間を優に超えるらしい。アプデで増えるらしいが、最初はシナリオが一つだけみたいだから個人的に急いでプレイするつもりはそこまでない。
「確か公式シナリオは配信禁止かつGMレスらしいんだよね。だから今のとこやる予定はないよ。でも僕の作ったシナリオも収録されてるから配信者の人を募ってGMをしようとは思ってるかな。」
「アララギくんはどうなの?」
「俺も公式シナリオをすぐやるつもりないな。リア友がクトゥルフに興味あるらしいから教えるつもりだ。」
「へー、じゃ一緒に公式シナリオにやろうよ、勿論ヤサガラスさんも。」
「一緒にやるのはいいがあれって4人シナリオだろ?もう一人どうすんだ?全員の知り合いってなるといつものサーバーで@1するか?」
「いやいやその君のリア友と」
「はぁ!?」
こいつは何を言ってるんだ?まず初心者が二人知らないやつがいる卓でやるとか怖すぎるだろ。というかクトゥルフ初心者がこの狂人RP野郎と一緒にやったら教育に悪すぎる。
「僕は二人とは全然やりたいんだけど...初心者の子がいきなりは可哀そうなんじゃない?」
「んじゃその子に聞いてみてよ、君たち謎解きや攻略ポンポン進めちゃうんだもん。やっぱり初心者というスパイスが欲しいんだよね~」
まぁあいつもいきなり知らんやつと一緒にやろうとは思わんだろう。ヒバナは言い始めたら結構しつこいし諦めさせた方が速いな。
「わーたよ、一応聞きはするが顔色濁った時点でなしだからな...それでヤっさんもいいっすよね?」
「僕はそれで問題ないよ。というかいつ教えるつもりなの?」
「カオス・ルルイエ発売日の8月4日。三日後すっね。新規ルール触るつもりなんで教えるって感じでもないですけど。」
そう俺がカオスルルイエで一番期待しているのが新規ルールだ。VRでのルールってことから今までの没入感とはレベルが違うだろうし、これから出るシナリオは新規ルールを基に作られる可能性が高いからできるだけ早く慣れておきたい。
「ま、そいつには俺から連絡しときますよ」
「うんよろしくね~、私はもう時間だから落ちるよ、またね~」
「僕もそろそろ配信準備をするから落ちようかな、よろしくねアララギ君。ほいじゃまた」
「お疲れ様です……はぁ~」
二人が抜けた後の部屋で一人頭を抱える。今の時点でこの話を止めてしまおうか、しかし俺がTRPGを始めたきっかけかつ普段GMとしてお世話になっているヤっさんに対しては嘘つきたくはない。ヒバナに対してはどうでもいいがさすがに連絡くらいはしておくか。
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