morning time 〜white〜

 一方、出社した有紗は……。


「くっ! 閉じ込められたっ! …………室外にッ!!」


 フロアの鍵が施錠されており、立ち往生していた。

 勤め先は小さなビルのいくつかの階を借りているが、鍵を持っているのは限られた人物だけ。


「……警備呼ぶつもりないし、この辺にしておくかー」


 有紗は壁に寄り掛かり、黄昏れ始めた。


「びえん……。今日は早くあがりたいのに〜! あがりたいのに〜〜!!」


 まるで三十二歳とは思えぬ挙動である。


 ……数十分後。

 エレベーター前に置かれている会社のゆるキャラである小鳥の巨大ぬいぐるみに有紗が愚痴っていると、ついにエレベーターが開いた。


「おはようございます……って白石さん何してるの?」

「ぶちょおおおー! やっと! 来てくれました! ね!!」

「白石さんが一番乗りなんだ。いま開けるね」

「うわーい! ありがとうございます!」


 有紗は自席に着席すると、駅前で買ってぬるくなったエナドリをドン! と机の上に置いた。


「今日も仕事しますかー!」


 まず業務を始めようとした有紗は、その前にとある宣言をすることにした。


「その前に……『今日は十七時であがります、絶対にだ!』送信っと!」


 強い意志を持った発言は、社内のプロジェクトメンバーが閲覧するチャットに送信された。

 果たして有紗は、十七時であがることが出来るのだろうか!?

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