夜を狩ける暗殺者

如月 月華

プロローグ

闇に包まれた東京の街の一角は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っている。路地裏の隅々にまで届かない街灯の明かりは、影を濃くするだけで、夜の本質を照らすことはない。


その静寂を裂くかのように、鼻から下を隠している5人の男女がビルの屋上に立っていた。黒いコートが風に揺れ、夜の冷気が彼らの肌を刺ように這う。

それでも彼らは動かない。

ライフルや、拳銃、スティレットに剣。皆持つものは違えど彼らは同じ、遠くの街並みをじっと見つめていた。


「……。」


「風向きは東、風速3mってとこかな。」


「最高のコンディションやん。ほな、行きましょか。」


息を殺し、夜の静けさの中にいるのは彼らにとっては日常の一部だった。


視界の中に映る標的は、明るい部屋の中で笑いながらワイングラスを傾けている。豪奢なスーツに身を包んだその姿には、何の恐れも見えない。


風が一瞬ぴたりと止む…


その時、合わせたように5人のうちの1人はライフルを構え、4人は隣へまた隣のビルへと移り標的がいる場所へと飛び移っていった



そう、それはまるで


                    夜を狩る__ように。

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