モブ教師の僕でも美少女になって異世界でスローライフ!?でも脱いだ皮膚で僕はオナニズム的循環運動を延々と繰り返し、内臓から追放されるも、チート能力でどうにか無双!
牧神にじん
第1話
火葬場にいる魚はいつも香ばしい匂いを漂わせながら勤務していた。
次の瞬間、神経網と血管を支える細胞たちが潰れ始めた。
真っ赤に沸騰した血と白濁とした黄色い脂肪の塊が裂け目から漏れ出してきた。
辛うじて顔の原型を保とうと皮膚と皮膚は糸を引きながら繋がっている。
目は完全にその機能を失い、何処にあるのかも分からない虚空を見つめている。
逆流した血によって、喉は生々しい水音を立てながら、最後の呼吸をしている。
彼女の肢体は完璧だった。まるで新品のキャンバスのようだ。
艶やかな黒髪は陽光に晒されては、金箔と宍を混ぜたような万華鏡を魅せる。
か細いながらも肉厚で、健康的な四肢は柔らかな曲線を描き、生娘の神秘性を演出する。
熟れた柘榴のように小さくふっくらとした桃色の唇。
隙間から覗く、我々を野生的本能へと刈り立たせる魔性の八重歯。そして、その白さ。
特筆すべきは瞳にある。水晶体は凡てを見通す。屈折の内に現象はクォーツ空間を無限に飛び回り、反射し、自らを更なる鏡と化して、波紋の如く、世界を満たしていく。
世界は彼女の瞳によって、満たされていくのだ。
彼女の『まなざし』は我々を錯乱させる。終わりの見えない狂気へと連れて行く。
素粒子渦巻く混沌へと誘う。曼荼羅広がる深層的分散の彼方へと導くのだ。
「4頁の13行目を音読しなさい。」
「承知しました。」
「―――まだ足りない。何もかも、すべてを捨てよう。そうしたら、どうにかなるのではないか。私は気違いじみたヤケクソの気持で、捨てる、捨てる、捨てる、何でも構わず、ただひたすらに捨てることを急ごうとしている自分を見つめていた。自殺が生きたい手段の一つであると同様に、捨てるというヤケクソの志向が実は青春の跫音のひとつにすぎないことを、やっぱり感じつづけていた。」
「…以上です。先生。」
「見事です。」
「放課後、職員室に来てください。」「特別補助金の手続きをしましょう。」
「はい、先生。」
火葬場は年季の入った木造建築ということも相まって、いつも埃臭かった。
廊下には百合や蘭の花弁が粗雑に散らばっていた。掃除は何週間もされていないみたいだ。
以前は管理人が掃除を行っていたが、最近はなぜかほっつき歩いているだけだ。
そんな疑問を思い浮かべていると、ちょうど彼が歩いているのを見つけた。
管理人の男は足を引き摺りながら、壁伝いでこっちに向かってくる。
彼の顔は既に崩れかけており、鉛色の荒々しい肌には幾つも穴が空いている。
穴の中には琥珀のような、体液が冷え固まったような塊が詰まっている。
彼はその醜悪な外見から他の生徒に「蓮根さん」と呼ばれていた。
蔑称なのか、愛称なのか、分からないが。
彼は一言も話さなかったため、誰も彼の声を知らなかった。
そんな噂そのものが今、私の方に向かってくる。明らかな意図を持って。
細工が施されたガラス窓が壁を伝う振動で震え、鋭い音とともに小刻みに揺れた。
百合や蘭は無惨にも踏み潰され、私の無関心が熱を帯びるのを感じる。
校内放送用のスピーカーからは数年前の戦勝報告が延々と流れている。
鼓動は次第に早くなり、気がつくと彼は私の目の前に立っていた。
「私に何か御用ですか?」
床が揺れる。私の足は恐怖に支配されていた。
「なぁ。」
酷い臭いだ。肥溜めのような刺激臭が辺りに漂う。
私は思わず鼻を塞ぎそうになったが、己の無礼さを恥じ、すぐに手を引っ込めた。
「なぁ。お願いが、あるんだが。」
彼は手を蠅のように擦りながら、まるで気恥ずかしそうに告白する乙女のように話す。
建物と同じくらい年季の入った手だ。ワット・マハタートの木の根を連想させる。
「何でしょう。私にできることならなんでも。」
「でも私、先生に呼ばれてますの。」
私がここを去る理由を作る前に彼は先手を打ってきた。
「服脱いでみせてくれない?」
次の瞬間、彼の分厚い手が私の腰を掴み、巨体に引き寄せられる。
鼻息が耳元で鳴り、腰を舐めるように撫でてくる。
好意も抱いてないだろうに「好き」と連呼するこの生き物は何だろうか。
こういう人種に限って、対象の能動的な立ち回りには臆病になる。
完全に内的体験の最中にいるのだろう。崩れた風景と崩れた顔の区別もついてない。
今度はスカートの中に手を入れ、何かを探るように、掻き回し始めた。
男は御目当ての物を見つけたようで、ちょうど股の中心部を念入りに触る。
それと同時に男は必死に腰を振り、服越しに不快感を押し付けてくる。
数分後、彼は股に惨めなシミを一つ作って、私を解放した。
彼は無言で電話番号が書かれた紙を私に渡して、何事もなかったかのように去っていった。
側から見れば、私は無傷だ。服に染み付いた浮浪者の臭い以外は。
「オブジェは変形するけど、匂いまでは消せないか。」
「だから、動物はフェロモンを用いるのね。」
「ほんと、動物は嫌いだわ。」
スピーカーは五時を伝える鐘を鳴らす。
外に目を向けると、夕日が校舎を照らして、真っ赤に染め上げているのが見えた。
荼毘の模様と重なり、幻想は色彩として、ゆっくりと網膜に刻まれていく。
金閣寺のように煌びやかではないが、この校舎も今だけは黄金で出来ていた。
ふと、太腿に一筋の冷ややかさを感じる。
「あいつ…」
次会ったら、一発殴ってやろうと思った。
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