僕はお前の妹じゃない!...です。

495推し

序章 世界変異

第1話 「女の子になっちゃった!」

ーーーそれじゃあその血をいただくわね。


 艶やかに発する声が真正面にいる赤い髪の幼女から聞こえる。


 僕は何もなすことはできずにこれからこの吸血鬼に吸われて死ぬのだ。


 ああ、身体はもう動かない。自分にある力は使い、眠気か押し寄せてくる。


 生きたい。ここで死ぬのは嫌だ。だから眠るな起きろ。身体を動かせ。


 僕は絶体絶命の状況から、まだ諦めずにできることを試みようとしたが、指一本を動かすのが精一杯だった。


ーーー抵抗なんてできないでしょう?


 ガブっと胸元から血を吸われている。こうして理解する。ああ、これはダメかも・・・


 僕はついに抵抗する心を手放してしまった。僕は最期にまだここにいる妹の無事を祈り、目を瞑る。


ーーーやっぱりあなた魔力がないのね。なのにあんな力を出していたなんて。


 吸血鬼は吸血を止め、語り始める。


ーーー私はね、妹という存在が欲しいの。ここにきたのもそのため。この私があなたを追い詰めるのに5分もかかってしまったの。ふふっ、気に入ったわ。今日からあなたが私の妹よ。


 何を言っているんだこいつは。僕はつむっていた目を開き、吸血鬼を見つめる。


 すると吸血鬼は自分の口を噛んだ。その口から血が流れた。


 何をやっているんだと訝しむ。その時、その吸血鬼は不意に僕の顔に近づきそして・・・


  吸血鬼は流れている血を僕に飲ませるように口付けをした。


 理解が追いつかなかった。僕を殺そうとした相手がなんで突然こんなことをするのか。


 吸血鬼が僕の口に血を流し込めたのを確認すると、その口を離した。


 すると、突然僕の身体が熱くなり始めた。


痛い、痛い、熱い、熱い、痛い、痛い、熱い、熱い

 

 まるでこれから身体が溶けて消えてしまいそうな感覚。ダメだこれは意識が消える。


 最後にこの痛みを与えた吸血鬼に手を伸ばす。ふと、自分の手を見るとみるみると小さくなっていた。


 そして視線の右側に紫のもやもやが見えた。そこから剣を持った少女が吸血鬼に斬りかかっていた

 

ーーーフン、こんなところまで勇者サマはくるのね。いいでしょう。少し遊んであげる。


 その光景が僕が最後に見た光景だった。


---------------------ー


(起きて杜和とわ起きてってば!!)


 頭の中で声がした。


 どれくらい寝ていたのだろうか?頭の中で寝る前の状況を思い出そうとする。


ーーーあら起きるのが早いのね。体はもう動かせるでしょう。


 向こう側から可愛いらしい幼女が話しかけてくる。誰だったかは思い出せない。


ーーーそういえば名前を言ってなかったわね。私の名はクェル。そしてあなたは私の妹のルルス。


 何を言っているんだろうこの子は?僕に姉なんていないし、そもそも僕は男だ。


ーーーふふっそれは過去の話よ。鏡を見なさい。同族になったのなら私たちの姿は見えるはずよ、


 僕は近くにあった鏡を見る。そこには自称姉のクェルとそっくりな姿をしている女の子の姿があった。ポニーテールで深紅の髪に深紅の瞳、服はフリルがついた可愛い黒色の服であった。そして、僕が自分の頰をつねると鏡の向こうの子も頬をつねっている。


 そして僕の意識ははっきりしそして直前の記憶思い出した。そして僕は大きな声を出し、


「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーー!」


度肝を抜かれ叫んでいた。

 

そして今日の出来事を回想する。

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