第8話 え?こんな出会い方ある?

一時間が経ち、やっとのことで新たな街、ウエストへ着くことが出来た。

体力の少ないエルドとスペスは既にぐったりしているがソーレはまだ体力が有り余っていた。

「な、なんでそんなピンピンしてるん?」

「小さい頃からダンスしてたんですよ。」

「クソ、陽キャが。」

「え?」

突然エルドに罵倒され困惑するソーレ。

エルドにとってダンスをしている人は陽キャ認定らしい。

そんなことよりも、エルド達は街を見渡す。

ストレインジとは違い、ウエストは少し小さく、 それでも人々は活気溢れている。

見た感じパープルボーイや大地の神らしき人はいない。

「取り敢えず、食料調達でもしますか。ソーレはあといくら持ってる?」

「あと49,900枚はあります。」

「え?多くね?」

「まぁ、全く使ってないので。」

エルドは貧困な村で水を二つ買ったためゴールドがあと48,000枚。それに対し、ソーレは引きが良かったため水は安めに済ませられ二人よりは結構な額がある。

まぁ問題は無いが、どこかいたたまれなくなる二人はどうにかして稼げないかと考える。

「あの、すみません。」

「え、あ、はい!」

入口付近で立ち話をしていると街の人に声をかけられた。

まずい、不審な奴だって思われたかと身構える。

だが、全くそうではなかった。

「あの、冒険者の方でしょうか?」

「…あ、はい。一応。」

斜め上の言葉に一同困惑する。

自分達が冒険者であるかは分からないがこれから色々あるだろうと思いとりあえず肯定しておく。

「実は、ご相談がありまして。」

「相談?」

「はい。実は先日、母の形見のであるブレスレットを盗賊に取られてしまい…。」

話を聞くとこうだ。

昨日の夕方、家へ帰ろうと帰路へ着いていたら後ろから何者かに襲われ、手首にかけていたブレスレットを取られてしまったらしい。

この国には無い珍しい宝石を使っているため売れば高くなるらしい。

取られるのも無理は無い。

「お金は支払います。なのでどうか、母の形見を取り返してくれませんでしょうか?」

その必死な姿に断る理由はなかった。

「分かりました!絶対に取り返してきます!」

「ありがとうございます!」

といい頭を下げる女性。

そんな四人の会話を一人の男がこっそり聞き耳を立てていることを彼らは知らない。


事情聴取を終え、盗賊のアジトへと向かう。

その盗賊はここら辺では名高いため、すぐに居場所が分かった。

名前はベーゼというらしい。そこら辺に居た人が言っていた。

「なーんか、ほんとに冒険者らしいな、今の俺ら!」

「そうかな?」

随分と乗り気なエルドに対しスペスはあまり乗り気では無い。寧ろ不安という顔が隠せていない。

それはそうだろう、武器すらまだ使ってすらいない素人が名高い盗賊に勝てるはずがない。

なんなら全滅という最悪な結果になる可能性の方が高い。

人生終了を覚悟するスペス。

「あ、あそこじゃないです…か?」

「…は?」

盗賊にアジトに着いたと思ったが、アジトが丸焦げになっている。

何が起きているのか分からずただ呆然と立ち尽くす。だが、近くに人がいることに気づき近づいてみる。

「あの…って、パープルボーイ!?」

「…。」

近くに居た人はまさかの昨日あったパープルボーイ。と手には恐らく盗賊らしい人が服を掴まれている。

等の本人は先程のエルドの言葉に怪訝な目を向ける。

「これ、貴方がやったの?」

そうスペスが彼に問う。

「…。」

「あー、はいはい分かった、もう関わらないよ。あ、けどここにブレスレット無かった?紫色の宝石が嵌め込まれたものなんだけど、ある人に取り返してって言われてて。それだけ聞いてもいい?」

「…。」

未だ不機嫌な顔で三人を見るが、

「…ブレスレットは見ていない。こいつに聞け。」

と言い手に掴んでいた盗賊を此方へ放り投げる。

「いでっ!?」

衝撃で尻餅を着く盗賊に三人はすかさず武器を取り出し盗賊に突き出す。

「昨日女性の身につけていたブレスレットを盗んだらしいな?」

「し、知らねぇぞ!」

「あんたあそこだと名高いから何をしても直ぐにバレるよ!」

「ックソ!」

言い逃れ出来ないことに気づき、そう吐き捨てる。

相手が諦めたことを感じ取り、エルドは盗賊のポケットを漁る。

「お、あった!」

「傷は無さそう?」

「おう!どこも壊れてねぇぞ!」

「良かった!」

ガッツポーズをする三人を他所にもう良いだろうと思いまた何処かへと行こうとするパープルボーイ。

その時、


ドカーンッ!


という音とともに大きな揺れがあった。

「うわっ!」

「な、なんだ!?」

その場にいた一同はバランスを崩し倒れてしまう。

今の音はなんだ?もしかして他にも転生者が?と思うが転生者はこれで全員なためそんなことはない。

それではこの揺れはなんなのか…。

「二人はその盗賊をお願い、俺ちょっと見てくる!」

「え?ちょ!?」

スペスの声を無視して音がする方へと向かう。

と、後ろから誰かが着いてくる音が聞こえる。

「え、お前も来んのかよ!?」

「…。」

「無視かよ!」

パープルボーイに突っ込むが、また喧嘩になるのも面倒臭いためそれ以上は何も言わなかった。


キェー!


今度は何者かの奇声が耳に響く。

衝動で耳を塞ぐが、パープルボーイはその場に座り込んでしまった。

「おい!大丈夫か?!」

「ッ…。」

肩をさするが、触って欲しくないのか嫌な顔をする。がそんなことを気にしている場合では無い。すかさず自分のジャージをパープルボーイの頭に被せる。

「…!」

その行動に目を丸くしてエルドの顔を見る。その顔は、何処か苦しそうな顔をしている。

その顔をじっと見てしまったため、エルドの後ろから来る魔物に気づくのが遅れた。

「!後ろ!」

「え?」

後ろを向くエルドだが、もう手遅れだった。

魔物はもう真後ろまで来ていた。武器を出してももう遅い。どうすることも出来ない。

死を覚悟し目を瞑る。


ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!


「うぐっ…。」

とまた奇声が響き渡り、今度は間近くなため耳が痛くなる。もしかしたら血が出ているかもしれない。

というより何か、あったのだろうか。そう思いゆっくりと目を開けてみる。

「ふぅー、危なかった。」

「…は?」

先程までピンピンしていた魔物がものの数秒で裏葉色の髪を宿した男に倒されていた。

エルドとパープルボーイが唖然と謎の男をじっと見ていると視線に気づきこちらに振り向き、

「大丈夫そー?」という。

「だ、誰だ、お前…。」

返答なんかせず、そう男に聞く。

「俺?んー…お前ら転生者っぽいし別に言ってもいいか!」

と言うと此方へ向かってきて二人と同じ目線にしゃがむ。

「俺はソリテール。この世界の大地の神やってまーす!」

「はぁ!?」

その言葉にエルドは驚きを隠せない。

パープルボーイは先程の魔物の奇声で鼓膜が破れ何も聞こえなくなっている。

「あ、なんも聞こえない?治してやろうか?」

と聞いても何も聞こえないため首を傾げる。

「あ、そっか。」と思い出してへっとする大地の神、ソリテールにエルドは呆れた目を向ける。

ソリテールは自身の手をパープルボーイの耳に当てる。パープルボーイは嫌そうな顔をするが耳を治してくれる事を察して大人しくする。

すると、ソリテールの手が光の粒子に包まれ、かと思えばそれはパープルボーイの耳を包み込む。

「…ぁ、聞こえる。」

「良かった…。」

自分事のように安堵するエルドにまたもや疑問を抱く。

「なぁ、お前ら名前何?俺が名乗ったんだからお前らも名乗れよ。」

「なぁなぁ」と少し上から目線のソリテールにイラッとする二人だが、平然を装う。

「俺はエルド。」

「…。」

「え?もしかして拒否系の人?」

不安を露わにするソリテールに少し罪悪感を抱く。

「…フルメンだ。」

そっぽを向きながらそう告げる。

それを聞いてソリテールは満足そうな顔をする。一方エルドは名前を聞いていなかったことに今更ながらに気づいた。

「エルドとフルメンね!よし!覚えた!」

満足そうな顔で立ち上がりどこかへ行こうとする。それにエルドは「ちょっと待て!」と声をかける。

「え?一緒に行動してくれないの?」

「…え?逆にいいの?」

「は?」「え?」

お互い何を言っているのか分からないと言った顔をする。そんな二人を見てフルメンは溜息を吐く。

「俺はもう行く。」

「えぇ?いいじゃん一緒に着いて行ってみようよ!」

既に着いて行く気満々になったソリテールに止められたがフルメンはまたどこかへ行こうとする。

「俺は仲良しするためにここに来たわけじゃない。」

「うん、音楽のためでしょ?」

「!?」

ソリテールの言葉に驚き振り返る。

何故それをと問いただしたい顔をしている。

「ふふん。お前の弱味はもう握っている。因みにエルドの弱味もね。」

「は?なんでさ。」

「言いたいこと、分かるよね?」

「…。」

悪趣味な神を先程よりも鋭く睨むがそんなことにも気づかない。

「…わかったよ。」

「エルド!他の転生者はもう居るんだろ?案内してよ!」

「え?あ、おぉ…。」

あのフルメンを直ぐに肯定させるとは、流石神と思っていると話題は自分の方へ向けられた。

そういえばあの二人は平気だろうかと思うが、何故かスペスさんがいるから平気かと思ってしまう。

ソリテールを二人のいる所へ連れていく。

その間、エルド達は何も話なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る