第一章・もう一人の隣人
ある日の昼休み、蓮が図書室で茉莉と話していると、背後から声が聞こえた。
「篠崎さん、ここにいたのか」
振り向くと、そこには茉莉と同じくらい整った顔立ちの少年が立っていた。高身長で、きちんと整えられた制服に柔らかな微笑みを浮かべている。どこか上品な雰囲気をまとっている彼の名前は久瀬晴人(くぜ はると)。
「……久瀬君」
茉莉の声に緊張が混じる。それを感じた蓮は、二人の間にただならぬ関係があることをすぐに察した。
「君が矢島蓮君だね?」
久瀬が丁寧に頭を下げる。驚く蓮に向かって、さらにこう続けた。
「僕は篠崎茉莉さんの許嫁だ。そして、君に少し聞きたいことがある」
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